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机をくっつけるside旭秀治
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「はいじゃあ教科書の34ページを開けー」
数学の授業が始まった。担当の教師がそう言ったのと同時に一斉に教科書をめくる音が教室に静かに響いた。
視線をめぐらしてみると、ところどころは教科書すらださずに既に眠りの体制に入っている生徒もぼちぼちいる。せめてノートをとるように見せかけようよ。
やる気のない生徒と微妙にある生徒。
そして真剣に話を聞く生徒の割合は見事に比例していない。
きっと微妙にある生徒が一番多い。半分を占めるんじゃないかな?
怒られるのは嫌。でも授業をまじめに聞くのも嫌。
二つの葛藤が叩き出した化学反応は、もっとも中途半端な形を生み出している。
話は聞かないけどノートはとる。
ノートを取るぐらいなら話聞いて理解したほうがよっぽど充実した時間になると思うんだけどな。
一時間ぼーっとしているのも退屈だろうに。
捻くれたことを考えている僕の机の上には数学専用のノート。無機質なペンケース。黒く汚れて丸くなった消しゴム。昔好きだったヒーローものの下敷きは隅が割れたりして安っぽく思える。
それだけ。それだけしか僕の机には並んでいない。
最も重要なものの不在に、思わず頭を抱えた。
教科書忘れちゃったよ…。
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