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菊池の車内②
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車内では静かにクラシックが流れていて、その雰囲気は菊池にぴったり合っていた。
優馬は菊池に問い質したいことが山ほどあったが、答えを聞くのが怖くて結局口を噤んで窓を眺めるだけだった。
先生の家に行って、先生の車で送ってもらっている。
小学生の優馬にとっては先生のプライベートを垣間見ることはとても特別なことな気がして、学校で二人きりの時とは違う緊張感があった。
…でもそんなの、今までの生徒も連れて来ていたんだろうな…
自分だけ特別なわけじゃない。きっと七海だって経験があるだろう。
…聞いたってまたはぐらかされるだけだ…
そんな考えばかりが浮かんでは消える。
結局何も聞けないまま、窓の向こうの風景は段々と見慣れた道になっていた。
「あぁ、まいったな」
沈黙の中、菊池がため息混じりに呟いた。
「本当に帰したくなくなってしまった」
「え、な…」
優馬が動揺して返事に困っているうちに、菊池は路肩に停車して優馬のほうを見た。
「もううちに泊まりなさい」
菊池は投げやりな様子で言った。
「いや、嫌ですよ!」
優馬は突然の提案に動転したが、菊池の家に泊まるなんて無防備な行為がどれだけ危険なことかわかっていた。
「それに、お母さんが心配しますし!」
「あぁ、保護者か…面倒臭いな」
ふー、と長い溜め息をつき頭を掻いた。
「よし。決めた」
「夏休みはうちに泊まれ。このまま君の家に行って保護者に話をつけてこよう。異論はないな?」
「ありますよ!!絶対!嫌です!!」
抗議する優馬をよそに、菊池はスマホを取り出して弄りだした。
優馬に向けられたスマホには、以前見せつけられた卑猥な優馬の姿が映った動画が流れていた。
「…!!それ、早く消してください!!」
「うちに来ればこれもマスタデータも消すよ」
「…ズルイ…!」
「ほかに君の望みがあれば聞いてやる」
のぞみ…
「な、七海に…七海にもう手を出さないでください!」
「…七海?」
菊池のこめかみがピクリと上がる。
「…友達思いだな。君が家にいる限り、七海には手を出さない。約束しよう」
家にいる限り…か…
今後一切、と言って欲しかったが、それ以上の要求はしなかった。
菊池の家に泊まるのはまんざらでもなく、しぶしぶという格好で了承した。
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