アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
黒谷透②
-
黒谷は優馬と七海が用意した質問に先輩として淡々と答えていった。
飄々としているが、その受け答えを聞くだけでもわかる、黒谷の分析力と観察力、それに---支配力。
質問しているのはこちらなのに、主導権はいつも握られている感覚。
「質問はそれで全部かな?」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ、こっちからもひとついい?」
「はい」
「菊池彰って知ってる?」
「!…」
その質問にどういう意図があるかはわからない。
黒谷は二人の顔を観察しているようにも、反応を気にかけていないようにもみえる。
「うちの担任の先生です…けど」
「そう!あいつまだ小学部にいるんだね。安心したよ」
ただそれだけの言葉なのに、ゾク、と悪寒が走った。
「あの、黒谷先輩は先生を知ってるんですか?」
「うん。随分生徒想いな先生だよね。放課後に"補習"とか…」
黒谷は目を細めて優馬に目をやった。
その単語に他意があるのか、優馬は勘繰ってしまう。
「"合宿"とか、」
黒谷はその単語ひとつひとつに意味を含ませて、優馬と七海の反応を観察しているとしか思えない。
「大詰めのときは"家庭教師"までしてさ。」
黒谷は動揺する優馬の視線をじっと見据える。
「今は君が先生のお気に入り?」
「え…と…」
「君はどこまでシテもらってるのかな?」
「…ッ」
他意はない。他意はない、はずだ。
特待生に補習をしてくれる先生、それだけの話。
「…教えてやれよ神崎。夏休み、どこで勉強してたって?」
七海が黒谷の質問に乗って追い討ちをかける。
七海は知っているのか?自分が夏休みの間先生の家にいたことを。
「いや、…あの…」
「へぇ、どこで?」
優馬がたじろいでいると、黒谷が興味を示してきた。
「…が、合宿…中学部の、」
「へー?俺も参加してたけどいなかったよね?」
「!」
「君、賢そうなのにすぐバレる嘘つくね」
黒谷に指摘され優馬の鼓動がドクンと重く跳ねた。
「本当は、君の家かな?それとも…」
黒谷は優馬の動揺する反応を愉しみながら続ける。
「先生のマンション、とか?」
「!……も、もうやめませんか、この話…」
早く、ここから逃げなきゃ
七海と、黒谷先輩に囲まれていると分が悪い。
「あぁ…ごめんね。責めるつもりはないんだ。たださ…あまり馬鹿だと見捨てられちゃうから、気をつけたほうがいいよ?」
ガタンッ
優馬は黒谷の挑発に思わず立ち上がった。
何か言い返そうとしたが、それこそ黒谷の思惑通りに墓穴を掘りそうで、次の言葉が出なかった。
優馬は筆記用具をまとめて、逃げるように挨拶をした。
「…失礼します!…ありがとうございました。」
黒谷はバイバイと優馬に手を振った。
七海も席を立とうとすると、黒谷から呼び止められた。
「あぁ、美鶴くん」
「君は少し残ってくれるかな?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
107 / 123