アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【好きと気づいたら…】*副会長side
-
会長は、……蓮夜は、好きな子が虐めたくなる、という昭和風な男だ。
虐めるといっても制裁とか、ドSとか、そういうのじゃなくて……ただ、純粋に。
多分、怒る顔が見たかったんだと思う。
一目惚れ……それで立花を?
いや、まだ確定したわけじゃない。
それに私が彼を好きだということも確定していない。
ただの気まぐれなのかもしれない。
有本勇気という温もりをなくして、心のどこかに穴が空いていて。
それを立花 遥燈という新たな温もりで埋めようとしている。
それだけなのかもしれない。
……それだけ。
*
立花が生徒会室から出ていって、暫くして私も出た。
職員室に行って立花の正式な"お手伝い"としての役割を資料に残さないとならないからだ。
……歩いてると、何かの話し声……いや、争い声が聞こえた。
角からちらりと見てみると、立花と……有本……。
両サイドには会計の和泉 秋人と書記の日南 涼がいる。
日南は立花の右腕を掴んで離さない。
「ねぇ。あんたいい加減にしなよ。勇気に傷つけたまま返すとでも思ってんの?あぁはいそうですかってなるわけないでしょ。僕にとって勇気が勇気がどれだけ大切かわかってんの?」
「えーっと……地球が崩壊するくらい?」
「はぁ?何いってんの?地球ごと消えるくらいだよ。」
ちょっと立花……。
しょうもない答えで地雷を踏むなんて……。
回答が不満だったのか、日南はより一層立花の腕を握る力を込めた。
逆鱗にも触れたようだ。
「僕ぅ、痛かったぁ……っ骨折れちゃったかもぉ……っ!」
はっ……くだらない茶番。
「勇気、大丈夫!?折れちゃったの!?……あーもう……っそこの愚民。てめぇ、謝ればいいとでも思ってんのか?こっちは折れてんだぞ。慰謝料払えよ!!」
……まったく、金持ちが金とって何が楽しいんだか。
「い、いい、慰謝料……ですか。例えばいくら……?」
「300万!寄越せ!」
「300万!?」
いい加減、我慢の限界。
「その手、離してもらっていいですかねぇ…。愚民はどちらでしょうか。あなた方のことですか?それともその転校生ですかねぇ、有本勇気。」
突然の登場に立花たちは目を見開いた。
そしてやがて和泉が言葉の意味を理解したようで、怒りに満ちた顔で口を開いた。
「……は?その言葉、勇気に向けて言ってんの?」
「他に有本 勇気なんていましたかねぇ……。というか、いい加減に立花の手を離してもらっていいですか?そろそろ腫れそうですので。」
「……なんなのアンタ。ついこの間まで馬鹿みたいに勇気にベタ惚れだった癖に。」
あの日南でさえ、我を失っている。
冷たく冷静を装った言葉には確かに怒りという感情が入っている。
「あ、あの……」
「そんなことはもうどうでもいいです。私にとって要らない思い出なので。
……で、有本。あなた骨が折れたといっていましたね?そんなに、落ち着いてられるほど弱い痛みじゃないと思いますが。」
「……っあいたたたたたっ……」
「…咄嗟の嘘が下手ですね。計画的な嘘はプロ級なのに。……慰謝料とか必要ないですよね?じゃあ、これで。」
一方的に話を断ち切って立花の左手を掴む。
「あの、副会長っ、どこ行くんですか?」
「保健室です。そこまで赤くなってたら痛いでしょう。向こうは運動神経抜群ですからね、力も結構強かったでしょう。」
「……まぁ、そうですが。でも、もう授業始まっちゃいます!流石に授業ついていけないって言うか……」
「そのうち教えます。とりあえず、早く冷やさないと悪化しますよ。勉強どころじゃないでしょう。」
冷やさないといけないのは、私の頭かもしれない。
立花の手を握ってるだけで、こんなにも心臓が早く鼓動を打って、握る手に力が入る。
……あぁ、好きなんだな。
そう気づいたら、もうこの手を離したくない、と思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 154