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信用 4
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2駅。たった2駅だけだ。
耐えられる。
そう考えたのが相手に伝わってしまったのか、だんだん相手も大胆になってくる。
するすると撫でていた手が、いきなりガシッとお尻を掴んできた。
「…っひゃぁっ…っ」
小さい呻き声を上げてしまった俺を不審に思ったのか、近くに立っているサラリーマンと目が合った。
助けて、と目で訴えたのに何故かその人は顔を赤くし勢いよく目を逸らす。
なんで、と考えたけどその答えはすぐに出た。
そうだよな…。
普通に考えて気持ち悪いって感じるのも頷ける。
後ろから手を足の間に入れられそうになって、思わずぎゅっと脚に力を入れ閉じる。
怖い。
ぞわっと立つ鳥肌は治まらず、吐き気がこみ上げた。
それで済むと思ったら太ももの裏を思いっきり抓られて。
「…いっ」
耳元にかかる息が気持ち悪い。
撫でては掴む手が気持ち悪い。
体に感じる目線が気持ち悪い。
目を合わせてしまえば自分がどうにかなってしまいそうで、振り向いて犯人の顔を見る勇気はとても無かった。
やばい、吐きそう…
限界に近づいた時、やっと最寄り駅に電車が到着した。
よろめく身体に鞭を打って逃げるように足早に駅のトイレに駆け込む。
個室に入り鍵を閉めて蹲る。
落ち着け。なんてことない。
相手は男だし触られただけ。意識する方がおかしい。
言い聞かせるけど、一度恐怖を感じてしまった身体はなかなか言うことを聞かない。
トントン、扉を叩かれて心臓がドキリと嫌な音を立てた。
「大丈夫ですか?」
さっきの奴とは違う人かもしれないのに、顔も分からない男は今の俺には駄目で。
無視を決め込んでいるとやがてその声の主は去ったようだった。
こみ上げていた吐き気が抑えきれず便座に嘔吐するが、ここ最近あまり食べ物を受け入れられなかった胃からは少量の胃液しか出てこず、生理的な涙を浮かばせて嘔吐くだけだった。
このままではまた呼吸困難になりそうで余計に焦る。
俺の手は、無意識にスマホを掴んでいた。
表示される名は柊 千景 ではなく、
────蓮見 晄士。
'恋ってのは、それはもう、
ため息と涙でできたものですよ''
千春さんの優しい声が頭にふと蘇った。
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