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贈りもの 8
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「…、ん」
闇の中に心を埋めてからしばらく経った頃、息苦しさで少しだけ意識が覚醒した。
''最近、これ多いな
いっそ死んでしまうのも心悲しくはない
もし望みが叶うなら蓮見さんに会いたかった"
なんて。
そんなことを、矢継ぎ早にぼんやりと思った。
「…っはぁ、……ひっ」
だんだん呼吸困難が本格的になってきて、こんなものにも慣れてしまった自分に倦厭する。
早く上半身を起こさないと。
瞼を持ち上げようとした、その時。
柔らかくゆっくりと、背中を往復する何か。
なに?
夢なのかな、全部全部。
すごく、あったかい。
息は苦しいけれど、そうじゃない何かの苦しさが取り払われた気がした。
ーーーーーーー
繭の中にいるような温もり。
僅かな圧迫感とほっとする人肌。………人肌?!
起き上がった身体はぐい、と引っ張られてまたベッドへ逆戻りする。
横を見ようとすると、胴の辺りを横から抱くように引き寄せられた。
「おはよ。もう起きんの」
問いかけるその少し掠れた声は、紛れもない蓮見さんのもので。
「お、はようございます…」
頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされる。
なんで隣に蓮見さん?!
俺、昨日…、
「っわあぁ!す、すいません!
俺っ、」
「でけぇ声出せるくらい元気で良かった」
小さく吹き出した久しぶりの蓮見さん。
久しぶりだからか、寝惚けているからか、余計に魅惑的で色気が増している。
「蓮見さん。お仕事、お疲れ様です」
んー…と、かろうじて唸ってはいるけど、これ、95%は夢の中だ、絶対。
「…あ!今日は!?お仕事いいんですか!?」
「ん、休み。
バイト昼からだろ?
それまで、寝かせろ」
「分かりました!」
そっとベッドから抜け出そうとした俺は、本日2度目、力強く引き戻された。
「お前もだよ」
「え?!
や、でも、2人だと狭いし、蓮見さん疲れてるのに」
「あーもう。うるせぇ抱き枕だな。
お前いた方がよく寝れるの。黙って寝てて」
そんな強情な…。
俺なんか、いない方がきっとよく眠れるはずなのに。
それでも。
「お願い、澄和」
久しぶりに呼ばれる名前に、
久しぶりに頭を撫でてくれる手に。
心臓の鼓動が早足になるのは止められなくて。
「蓮見さん」
「なに?」
「なんでも、ありません」
幸せ、だなあ。
俺には有り得ない、大好きな人との未来なんかを想像しちゃったりしながら、そっと目を閉じた。
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