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音も立てずに千鶴は泣いていた。
頬を涙が伝って流れていく。その泣き顔が幻想的に見えて、思わず手を伸ばしていた。
「なんで泣いてんの」
「泣いてないよ」
「泣いてるよ」
涙を拭ってやると、慌てて自分の頬に残る涙の跡に触れる。それでやっと自分が泣いてる事に気が付いた千鶴は、俺を見ながら動揺していた。
「なんで……」
「俺が分かるわけないだろ」
しばらく涙を流したまま、千鶴は俺をじっと見ていた。俺も何となく視線を外せなくて千鶴の目を見つめていた。
「ごめん……皐月さん、ごめん」
「なにが?」
謝られるような事はされてない。
何に謝っているのか不思議だった。
「オレ、皐月さんが好き」
俺の目を見たまま、千鶴は悲しげに微笑んでそう告げた。
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