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「ウッ」
「……いッ」
「っお前。……このクッションちゃんとしたやつじゃないだろ?」
上半身を起こして
腰をさすりながら会長は視線を寄越す。
「倉庫から引っ張ってきて貰ったものなので、……わかりません。」
「………………まぁ、いい。怪我はしてないな?」
「……していません。」
「何か言いたいことでもあるのか?」
ほんの少しだけ生じた微妙な間をかんじとってか
会長は促すように告げた。
「もう気を使って頂かなくても構いませんよ。」
「どういう意味だ?」
「もうここに、音声も映像も入っていないので。誰にも会話は聞かれませんよ。」
「知ってる。」
「なら、なおさら僕の怪我の心配をする必要はありません。」
「俺は本当に思ったことしか言わない。さっきの言葉もどの言葉も。全部、本心だ。お前に乗せられていった言葉なんかじゃあない。」
「今、優しくしても心配しても意味なんてありませんよ。」
「随分、ひねくれてるな。」
俺の言葉を聞いた会長は眉をひそめた。
「まぁ、俺には別にどうでもいい事だ。それに、俺はこのゲームでは負けてはいないしな?」
その会話を切るようにして会長はそう告げた。
「これが見えないのか?」
手に持った白色の鉢巻を見せて
勝ち誇ったように笑う会長に、溜め息をついた。
「意外にも子供っぽいんですね。」
「今年の新入生は、生意気すぎだな。新入生だろうが俺は手加減はしない。このゲームは俺の……」
その会話を遮るように
2人の距離を引き裂く強い風が吹いた。
雑草や菜の花も攫うような風が___。
心をも攫うような風。
「このゲームは俺の……何ですか?」
「お前。」
たった一言だけ言葉を零してから何の動作もなく
じっと視線を向け続けられていることに居心地の悪さを感じた。
「何ですか。」
「随分、」
躊躇いがちに
けれど、流れるような所作で
右手を左頬に添えられる。
ほんの少し顔を持ち上げられて、至近距離で視線を合わせるように見つめられている状況にびくりと肩が揺れた。
けれど、そんなこと気にもしない様子で
会長は言葉を続ける。
「その髪といい、その瞳といい」
瞳?
会長のその言葉で思い出して顔を背けると
ポケットに眼鏡があることを確認する。
そういえば
あの時から、かけてはいなかった。
ポケットから眼鏡を出して
かけようとしたら
頬に添えられていたその手で
眼鏡を持つ手首を掴まれる。
「何で、隠してるんだ?」
「別に隠してなんていませんよ。とゆうか、早く離して下さい。」
「イヤだって言ったら、どうするんだ?」
「面倒な人ですね。」
「可愛くない奴だな。その性格で全部ダメにしてるんじゃないのか?」
「何のことを言ってるんですか。」
「まさか、気づいていないのか?」
会長は折り曲げた指を顎に当て
考え込むような仕草をした後
薄く笑って軽くうなづいた。
「それもアリかもな。」
勝手に納得している会長に向けた顔は困惑そのものだったと思う。
それを感じ取っったのかは定かではないが会長は付け足すように告げた。
「俺だけが知っているっていうのもアリだな。」
今までの薄く笑うといったものとは違う
楽し気な無邪気な笑顔でそう告げた。
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