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紛擾
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時を遡って
学園で祭りが開催されて
ほんの少し経った12時頃
コテージにいる紅組の穏やかな流れが変わりつつあった。
穏やかな海のよく見えるコテージで
いつもと同じ制服を着たまま都築は唯賀を見ながら
溜息をついた。
「駿、いい加減。機嫌をなおしてください。せっかくの賞品なんですから。少なくとも、その不機嫌オーラを消してください。」
「別に、誰も見てないから構わないだろ。」
「貴方がそんなこと言うとは思ってもみませんでした。いつも、気を張っている貴方が。」
都築の発言に
ジロリと鋭い目つきで睨みつける唯賀の視線を
ものともしない様に和かに笑って流し都築は言葉を続けた。
「いつでも見られていることを忘れないでくださいね。生徒会長なんですから。狙われ続けていることを忘れないでください。その座」
「それは、お前も入ってるのか。悠介。」
「さて、それは。どうでしょうか。」
いつもの完璧な笑みを貼り付けて
都築は答えると、唯賀は視線を外し流れては打ち波を作るを繰り返す海を眺めながら答えた。
「なんにせよ、俺はまずやらなきゃいけないことがある。」
「正体不明の人物のことですか?」
唯賀の言葉を遮って続けた都築は
唯賀の瞳に宿るひどく虚ろで黒い焔を認めながら問うた。
けれども、帰ってこない答えに
ため息をついて言葉を続けた。
「他に頼りになる証拠でもないんですか。」
「全くないな。白い髪と蒼い瞳をしてたってことしか、それもちゃんとみたのは一瞬だけ。」
「おそらく、変装してたのでしょう。その容姿も本当の物だとは言い難いですね。それでも、そんなに気になるなら彼に頼んでみてはいかがですか。」
「彼?」
「彼ですよ。_____月城宗司」
「アイツか。」
重たげに口を開いた唯賀が僅かの溜息を漏らした時だった。
都築の携帯が音を立てて鳴ったのは。
唯賀は、いつも憮然とした態度の都築の表情が曇っていくのを見ながら、ただ無表情に見つめていた。
「すいません。駿、私は学園に戻ります。」
唯賀に有無を言わせる間も無く
立ち上がった都築の後ろ姿が遠くなっていくのを感じて
完全に見えなくなってから、席を立ち上がり
自室に戻る。
「寝るか。」
出発前夜のゴタゴタした動きのせいで
ほぼ、寝ずにきた唯賀が宮路保有のホテルのフロントに来た時だった。
いつもとは違う厳しい声色をした校長の声を聞き取ったのは。
「西方くんもやってくれる。」
ぎゅっと杖を握りこみ
眉間に皺を寄せる校長を唯賀は目に留める。
「それは、一体。どういうことですか。宮路校長」
「唯賀くん。」
「西方がどうかしたんですか。」
校長は、少し躊躇った様に髭を撫でた後
重い口を開いた。
「西方燐の子が学園にくるそうだ。今日」
その唐突な内容に
唯賀も形のいい眉をひそめた。
「西方の……?」
「まるで、やり直しのようだね。全員、揃うか。」
校長の眇められた瞳を見ながら
唯賀も目を細めた。
「西方燐の子。」
「私は、戻らなければいけない。後のことは、頼めるかい。」
「その心配はないですよ、校長。その件は恐らく悠介があたる。もう、出発したはずです。」
「都築くんが?」
唯賀は先ほどの悠介の様子を
思い出し、校長を見据えながら答える。
「悠介にあんな顔をさせるのは家関連だけですから。このタイミングなら、間違いないでしょう。」
唯賀のその言い分に校長も頷いて答えた。
「今回は、都築くんに任せよう。本来なら任せたくはないが、ね。」
「……西方、彼が来るなら荒れますね」
「唯賀くん、気をつけるといい。どんなに美しかろうと棘はつきものじゃからね。まだ、棘のある花か、ただの可憐な花かは分からないが。」
「どういう意味でしょうか。」
「昔、突如現れた西方燐に多くの生徒が魅入られてしまった。西方燐は全てを壊し、春田叶多はそれを止めようとし、そして_____君の父親、唯賀勝羽は今でも後悔をし続けている。」
「さっきから、何が言いたいんですか。」
「私から言えるのは、君は恋をするだろうってことだね。あの堅物会長の唯賀くんが〜!このこのぉっっ!!」
呆れたようなため息をついた後
校長を一蹴して、唯賀は自室へと足を運んだ。
「もしも、あの時と同じならば、確実に、西方宵くんに救いを感じる。そして、君は____。」
校長の口からはそれ以上、何も発せられなかった。
それは、ありえない未来だから。
そして、過去と未来は違うものであると信じたいから。
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