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白猫の跡1
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「何でしょうか。鳴川さん」
寮監の鳴川の姿を目に留めて、都築は固い表情のまま
言葉を紡いだ。
「君たちの探してる人は、もう正門を通るから。今から、行っても間に合わないよー!」
「……戻りますっ」
さっき降りたばかりの車のドアを開けて
乗り込もうとする都築に鳴川がそのドアが閉まるのを阻んだ。
「そんなに、縋りたい?西方に」
他の誰にも聞こえないような小さな声は
都築の耳にだけ響いた。
「……は?」
「ちょっと、気になっちゃったからさぁ。それって楽しいのかなって。僕なら、お菓子食べてる方がいいかなぁ、そんなことするより。」
鳴川の言葉を聞いた
都築の表情が滑り落ちていく
「そんな事……?」
「そこまでにしてください。鳴川さん」
都築の雰囲気が変わったのに気づいて
帝が止めに入るが、鳴川は見たこともない冷酷な瞳を
映したのに動きを止めた。
「やだなぁ、僕は何もしてないって。」
「縋っているとして、何が悪いんですか。」
色のない瞳で呟かれた都築の言葉は
鳴川にも聞こえて、微笑を浮かべながら首筋をぽりぽりとかいた。
「あり?違うよ、勘違いさせちゃったかなぁ。別に、悪いなんていってないよ。聞いてみたかっただけ。それにさ、門に行ってももう誰もいないし西方宵くんからの伝言、聞きたくない?西方が本気で都築を捨てられるわけないでしょ。」
「でん………ご、ん?」
さっきまでの落ちた声色とは打って変わって
弾んだ色で都築は呟いた。
「うん。伝言」
鳴川が差し出した小さな紙を都築は恐る恐る受け取って、急いで視線を走らせる都築に鳴川は困ったように笑った。
「_____1ヶ月後。」
【1ヶ月後にお会いできる事を楽しみにしてます 西方宵】
短く書き綴られたソレに都築は嬉しそうに笑んだ。
そして、鳴川に一礼をしてからその場を去ろうとする
都築の手を鳴川が掴んで、ニヤリと笑った。
「祭りは、これからじゃあぁぁああっっ!!!」
「っ、……何をしてっ!」
逃れようとする都築に有無を言わさず連れて行く
鳴川を見ていた、帝、白、百樹は少し遅れて先に行った2人の後を追った。
「みーちゃん!行こっ」
「くっくっくっくっ。都築の奴が振り回されてるのは腹がよじれるほどおもしれぇな」
「おーい。百樹、本性でてんぞ。」
「いいんだよ。今は、このお面のお陰で顔なんか分かりゃしねぇよ」
「お前、裏表の性格激しすぎだろ。てゆうか、さっき都築と鳴川さんの雰囲気悪くなかっ……」
「もうっ!そんなのいいからお祭り!鳴川さんは、そうゆう人なの!掴めない人なのっ!」
「わ、分かったから押すな!白」
帝の背中をグイグイ押す白につんのめりそうになりながら
言うと、解放されて脱力したのも束の間
「「あ!アレっ!」」
2人同時に袖を引っ張られる。
「わ、分かったから!引っ張るな、それで何処いくんだよ」
「「クレープ(だな)!」」
そう言うや否や、超スピードで走っていく白と百樹の背中を見ながら、帝は瞼を押さえながら呟いた。
「そういや、俺、疲れて寝るはずだったのに。せっかくの休みが……。もう、いいや。都築も祭り参加したら何か色々と有耶無耶にできそうだし」
帝はのろのろと重い足取りで2人の後を追いかけて
クレープ屋の前までいこうとすると、誰かにぶつかって
顔をあげた。
「あ、悪……い」
「いえ。こちらこそ、すいません」
一礼して去ろうとする
何処かで聞いたことがある声に帝は振り返ってその背中を目で追うと、足元に見覚えのある白い猫が機嫌良さそうに尻尾をピンと立てていた。
「…リア。迷子になっても知らないからな………ったく」
深いため息をつくとその白猫を追った。
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