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傾城7
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「早くお休みになったほうがいいようです」
手首を掴む力が弱まったのを見計らって風紀委員長と距離を取ってから乱れた布団をかけ直して、椅子を極力ベッドから離すため窓際にピタリとつけて座る。
「幽霊にも嫌われたみたいだ」
トロンと寝惚けたような目で見てくる風紀委員長は眠たいだろうに寝てくれようとせずに、上体を起こして立てた膝の上で頬杖をつきながら身体を前後に揺らしながら時折カクリカクリと眠りの淵に入ったり出たりを繰り返していた。
「ん。手、繋いでくれたら眠れる気がする」
差し出された手を一向に降ろすそぶりがみえなくて仕方なしに、その差し出される手に手を重ねると、指を隙間に滑り込ませてきゅっと握り込まれる。
「あったかい。子供体温だ」
俺の手を握って暫く経つと、ゆっくりと今度こそ
眠気に誘われるまま目蓋が落ちていく。
「厄介な人だな」
外だったり廊下だったりと所構わず寝たり
あの副風紀委員長と勘違いしてるのかは分からないけれどキスをしたりと面倒な人だ。
風紀委員長の恋人としての苦労が窺いしれる。
「いずれ、副風紀委員長に刺されるな。この人。…………いや、他の誰かに刺される確率の方が高いか。それにしても________あったかいのはどっちだか。」
じんわりと手のひらに伝わってくる高めの体温を起こさないようにゆっくりと引き剥がし、風紀委員長に口付けられた唇を強く拭うと同時に保健室の扉が開き黒河先生が戻ってきた。
「あ、先生。」
「ん………。白石。」
「「あれ〜。何で、補佐くんがここにいるの?」」
「お前らは黙って座ってろ。仕事増やすんじゃねぇ」
「「先生のくせに、口悪いー」」
「仕事を増やすような奴を生徒とは言わないんだよ。」
誰だ?
黒河先生でも白石先輩でもない声の主達が一体誰なのか気になってカーテンで遮られている隙間から覗くと、見分けがつかないほど同じ顔をした2人の生徒がいた。
「………双子?」
カーテンを引いて双子を見つめていると
「ねぇ、ねぇ、陽日」
「なあに、陽夜」
「あの人、だれ?」
双子の片方が俺のことを指して言った。
「さあ?」
双子は顔を見合わせると黒河先生に座らされていた椅子から飛ぶように立ち上がるとこちらに近寄ってきて、ぐるぐると俺の周りを回ってジィッと観察するように見つめられた。
「陽日、なんか暗いね」
「陽夜、なんか地味だね」
「あ、陽日。思い出したよ。この人、会長に虐められた人だよ。ホラ、あの白い鬼のやつ!」
「あ!本当だ!!」
「「可哀想ー」」
双子は顔を見合わせてくすくすと笑いあうと、うーんと考え込むようにひそひそと囁き合い、こっちに向き直った。
「僕は、小夜陽日。お兄ちゃんだよ」
「僕は、小夜陽夜。弟だよ。」
双子は、お互いの手を取り合ってぐるぐると円を描くようにして回りつづけてピタリと止まる。
黒河先生は、白石先輩の足の患部を見ながら双子に対して呆れたような表情を浮かべていた。
「「題して、どっちが陽日くんでしょうかゲーム!どっちが陽日でどっちが陽夜なのか当ててみてよ」」
双子が全く同じ顔で同じ表情で尋ねてくるけれど
初対面の双子がどっちがどっちかなんて分かるはずもない。
「分かりません」
「「どっちが、陽日だと思うの?」」
それでも食い下がってくる双子に俺は適当に答えようと口を開く。
「じゃあ_________。右が」
途中で、言葉を切った俺に双子は不思議そうな視線を向けてくる。
「………………分からないではダメですか」
「「えぇー。それは、なしだよ!」」
「とても似ていて、本当に__________いな。」
「「………………ん?なんて?」」
「いや、何でもないです」
見分けもつかないほどに顔の似ている双子。
俺の持てなかったモノを持っている彼らが
何故_____。
同じ表情をしているのか。
右だと俺が言った時の
彼らの好奇心や揶揄うような表情の裏でお互いの手をにぎりあうその光景を 知っている。
知っている。知らない筈がない。
そのゲームは、ただの遊びじゃないのだろうことも知ってる。
このゲームを始めた原因はきっと違うけれど
笑顔を浮かべた裏にあるのはいつだって不安だ。
このゲームが適当に答えていいものではないことは分かる。それでも、その心が分かるからこそ。
俺の出す答えは決まってる。
「じゃあ、右で」
「「ぶっぶー。不正解でーす!!」」
「ほら、問題児ども遊んでないでさっさと始末書書け」
「「はぁい。」」
双子が俺から興味をなくしたのか黒河先生の方へと走っていくと、座っていた椅子へと再び腰かけた。
「佐藤悪かったな。面倒かけた。」
「いえ。」
「佐藤くん!ありがとうね。コレ」
白石先輩の患部に当てていた簡易的な氷水の入ったビニール袋を指差して言う白石先輩に軽く頭を下げて
今度こそ、教室に帰ろうと保健室を出ていく。
「「ねぇ、そういえば。りっちゃん先生。新しい転校生どんなの?気になるなぁ。もう会ったの?」」
「いや。お前ら、余計なことすんなよ」
「「えぇー。僕たちの新しいオモチャになるかもしれないのに。」」
保健室の扉を閉める間際そんな会話が聞こえていたから興味が無くなったものと思っていた。だから、双子の片方が俺を目で追っていたことに気づくことはなかった。
「………羨ましい______________?」
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