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雪 side
「……………エレベーター。______________いや、でも。この時間だと丁度見回りの時間かな。」
何段か階段を飛ばして、駆け下りていきながら
瑠夏に見せられた〝はるさん〟のその写真がどうしても頭から離れることはなかった。
「どんな手品を使ったのかは知らないけど、あの子と同じ顔で。あんな格好して誘き出すつもりなら………。容赦はしない」
佐藤蒼くんが、僕にとって特別であるように
〝はるさん〟は、あの子にとって言葉に表せば
_________【とくべつ】な人だ。
〝はるさん〟と同じ格好をする名谷はるかの真意は分からないけれど、確実にあの子を誘き出そうとしているのだけは確信できる。
『………クロユリ_____________________クロユリだよ。』
最初にあの子に会った時は、女の子だと思った。髪も長くて後ろで結っていたし〝はるさん〟に言われるまでは分からなかった。
次に、見かけた時、僕は気づかなかった。
気づかずに通り過ぎてしまった。
そして、この学園にいる佐藤蒼があの子だと気づいた。
「………ちゃんと、気づいたのは2回目に会った時って遅すぎるけど。」
「………………さしい、やさしい王子様」
誰もいないと思っていた非常階段でだらんと全身の力が抜けたように垂れ下がった誰かを抱えて、片手にスタンガンを持った白髪の人物に目を留めて立ち止まり、その人物の死角になる位置へと身を潜める。
「荒谷くん?」
その人物に気づかれないよう呟きながら、抱えられていた人物はどうみても荒谷くんだったと、その光景を思い浮かべる。そして、その荒谷くんを抱えてた人物は……………。
『はいはい。………名谷はるかです。_______あー、なるほど。そっか、生徒名簿に名前入れてくれたんだありがとうね。………………じゃあ、これからは逃げも隠れもしなくてもいいんだよね。〝白鬼〟なんて名前じゃなくて本名の名谷はるかとして。あー、そうそう。やっぱり、この学園にいたみたいだよ。……………………早く見つけ出さないとね。_________あのこを。』
誰かと話すような会話が途切れて、少ししてから階段を上ってくるような足音が聞こえ、息を潜める。
『あー。…………何でもない。ただ、ちょっと…………気になってさ。すぐそっちに行くよ、今どこにいるの?』
その会話に耳を傾けながら、見つからないように移動しようと思っていた所で足音がどんどん僕から遠ざかっていき、暫くしてから扉の外へと消えていった。
「………一体、誰と話していたのか。分からないな」
自分の端末を取り出して、圏外と表示された画面を見て明らかにこの場にいない誰かと話しているような、名谷はるかの会話に疑問しかもてない。
「生徒会か風紀の何人かは使用できる端末があるって聞いたけど、その関係者?………瑠夏の言う通りなら、名谷はるかはなんの情報もない生徒。そして、確かに似ている。」
名谷はるかと名乗る人物に、得体の知れない違和感を感じながらも恐らく、スタンガンで眠らされ壁に寄りかかっていた荒谷くんのそばによると、荒谷くんのそばに落ちていた端末を手に取る。
「………誰の端末?_________充電が切れてるみたいだけど。…………さくらのキーホルダー?」
その端末をとりあえず自分のポケットにいれて、荒谷くんの肩を掴んで揺り動かすが、全く起きそうもないこの子をどうしようかと考えを巡らしながら独り言を呟く。
「……………………もしかしてさ、君も何かを知ってる?______クロユリなんて言った理由も、春くんを連れて行った若い男の人のことも、それどころか〝はるさん〟ですら教えてはくれなかったことも__________知ってるのなら羨ましい。」
天宮春くんには僕を拒めない理由がある。だから、近づいたとしても拒まれることはない。
「兄さんに感謝しなきゃね。佐藤蒼に近づける大義名分が僕にはある。…………近づいたら分かるよね。ふしあわせの理由も。」
いつかあの子が僕の理由に気づいたとしても、それまでに張り巡らせる繋がりで、情だろうが依存だろうが何でもいい、重なり積もりつもったモノで、逃げられなくしてしまえばいい。
「代わりになれるとは思わないけど、僕は貴方の代わりだ。………………っと、今はそれより荒谷くんをどうしようか、考えない_________とね。」
荒谷くんの制服のズボンのポケットから半分出てほとんど落ちかかっている端末に気がついてそれに手を伸ばす。
「酷い割れ方してる端末。それにボールペン?このボールペンどこかで見たような。」
このボールペンを持っていた人物を思い出した瞬間に
今の学園で唯一の連絡手段と言ってもいい学内掲示板サイトが通知音を鳴らせた。
【|2より:1_=)_^_〜_<_9_€,
2_\_2(_☆_|,】
謎の暗号のような文が流れてきて、通知を切ってしまおうとしたその瞬間に、添付ファイルがあることに気づいてそれを開くと、僕が手に持っているボールペンと全く同じボールペンが映されていた。そして、そのボールペンが映る背景のその部屋には見覚えがあった。
暫く、その暗号を見た後にその意味が読み取れた。
「………………やっぱり、僕よりあの子のこと分かってるみたいだね。瑠夏」
学内掲示板の指示通りに、アプリを開くと白い壁のようなものと蹲った人物が映し出される。
『………………なさい。ごめん…………い。』
その映し出される映像を流したままワイヤレスのイヤホンを耳につける。荒谷くんに割れて壊れている端末を返して、ボールペンと自分の端末をポケットにしまい込む。
「本来なら、趣味じゃないけど………一発ぐらい、殴らせてくれないかな。あの性格ひん曲がりを。」
荒谷くんを引きずってでも持っていこうと、そして早くあの場所に行かないといけないと、荒谷くんを肩に担ぎながらその扉を開くと扉の前で転んでいる寮監さんがいた。
「びびび、びだぐり……じゃなくて。びっくりした!!何か声がすると思ったら………ぇ、違うよね。ゆ、ゆ、幽霊とかじゃないよ………ね。違うと言ってお願いだから!!!」
「すいません。………寮監さん。この子、お願いしてもいいですか。」
「え、えぇ?わ、わかった。」
「ご迷惑おかけしてすいません。」
荒谷くんを、寮監さんに任せて非常階段を登ろうとして
ピタリと立ち止まって振り返る。
「そうだ、聞きたいことがあるんですが。見ませんでしたか?」
「えっと、何を?」
「いえ、何でもないです。荒谷くんのことすいませんがお願いします。」
寮監さんに軽く会釈をしてから立ち去って、映像に映ったあの場所へと足を進めた。
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