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記憶の雨2
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「なんでそんなことを?」
宵が唐突に尋ねてきた内容に帝が疑問を返すと、宵はにこりと微笑んで
「風紀委員長さんが探しているその人に心当たりがあるからです。」
と、告げた。
「心当たり?黒河先生が知ってるのは名前に関しての情報だけのはずだけど。」
「僕の知るその人に似た人がこの学園にいるかもしれないんです。けど、確信がない。そんな時に、風紀委員長さんが“はる”という名前の人を探していたのを聞きました。………………僕の知るその人も同じ名前なんです。」
「君にとって_________その人は特別な人?」
「………………………ぇ?」
「何となくそう思っただけだよ。けど、反応を見るにハズレ、かな。」
「………そうですね。当たってもいるし、ハズレでもありますかね。_____僕の知る〝彼〟は、特別に〝こわいひと〟でした。」
「〝こわいひと〟?」
「はい。できれば、もう二度と会いたくはない人、なんです。」
宵は、手首につけられているリストバンドを摩りながら答える。帝が〝こわいひと〟の理由が何なのか気になっているのはわかってはいたが、宵はその理由を口にすることはなかった。
「だから、あなたの知る〝はる〟と僕の知る〝はる〟が同一人物なのか確認をしたいんです。なので………どうか、僕の質問に答えて頂けませんか?風紀委員長さん。」
「………………答えられない。」
帝の返答に宵は足を止めて帝を見つめると、困ったような表情を浮かべながら帝は口を開く。
「分からないんだ。………暗がりで会ったから。名前以外は、何も知らない。そもそも、その名前に関しても、本当だったかも怪しい。」
「それなら、容姿も指輪をしていたかも分かりませんよね。」
「指輪?…………いや、どうかな。本当に暗かったからな。」
「じゃあ、最後に、一つだけ_____。その彼は、〝暴力的〟でしたか?」
段々と睡魔に襲われつつあった帝は
宵のその予想もしていなかった質問に戸惑う。
おまけに、宵が泣きそうな表情を浮かべていたものだから余計に言葉を紡ぐことが出来なかった。
数秒の後________。
我に返った帝は、言葉を無理くり繋げる。
「………いや、そんな子には見えなかったよ。」
「………………そうですか。変な質問をしてすいません。あの、風紀委員長さん。どうか、僕がこの質問をしたことは内緒にしてもらえると有り難いです。」
「分かった。約束する。
その代わりに俺からもお願い、俺が探していたことも言わないで貰えると助かるよ。探していたことを他の人に知られたら、迷惑かかると思うから。…………特に写真部と漫画研究会とかには知られたくはないし。」
「写真部?と漫画研究会にですか?…………よく分からないけど、大丈夫です。僕も、風紀委員長さん以外には話すことはないので安心して下さい。」
そして、帝は宵を寮まで送り届けた後
すぐに学園へ戻ると告げて、足早に去っていった。
その小さくなっていく背中を見ながら、呟く。
「どうか、お願いだから_______僕を見て。」
その背中が見えなくなるまで見つめていた宵は
自室へと戻る道すがら
不意に、休憩室から聞こえてきた音を不思議に思い足を向ける。
扉近くに来てみると、聞き知った声が聞こえる。
だが、その声の主は少し怒っているようだった。
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