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「はるちゃん手、痺れちゃってた?」
グーパーグーパーって手をにぎにぎしたり開いたりを1人で繰り返してたらけいくんにそう言われたからコクリと頷く。
頭の中ではけいくんが優しくていい人だって分かってるし、なんて言ったってゆうくんが優しい人だよって教えてくれた人だから、怖くないって分かってはいるんだけど、どうしても人見知りを発動させちゃって上手くコミュニケーションをとれない。
言いたいことを伝えなくちゃいけないし相手が楽しめるように会話を繋げなきゃいけないのに吃っちゃうし、そもそも言いたい事が相手を怒らせないか不愉快にさせてしまわないかが心配で上手く話せない。
どうして自分はこんなにも何も出来ないのだろうか。
ゆうくんやお義父さんやけいくんが、こんな僕の為に動いてくれているのに、僕は傲慢に病気ぶって寝ているだけだ。
こんなにも世の中のゴミみたいな僕に、僕の周りのキラキラした人達は一生懸命になってくれる。
その事実に申し訳なくて、何も出来ない自分が悔しくて変わらなくてはいけないと分かっているのに、何処からどのように変わればいいのかわからない。
本当にダメで生きているのが迷惑以外の何物でもない。
「酸素マスク嫌かもだけどもーちょいしててね〜」
けいくんの手がすっと伸びてきて僕は叩かれるのが怖くなって手で顔を隠す。
「はるちゃん、何もしないよ」
「ご、ごめ、ごめなさい…」
なんて失礼なことをしてしまったんだって僕は慌てて謝ろうと口を動かすんだけどマスクが邪魔してモゴモゴするだけで上手く伝わらない。
このままじゃどうしよう、もっとけいくんを怒らせてしまう。
「大丈夫だよ。もう誰もはるちゃんを打たないし、はるちゃんが痛いこと嫌なことはしないよ。」
どういうことだろう? 痛いのと嫌なのは僕の生活の一部であって、それがある生活によって僕はつくられてきた。
痛いのと嫌なのがない生活ってどんなのだろう。
ゆうくんにいい子いい子されてギュッてされてたまにチュッてされて、夜には悪い子の僕を叱る痛いのと嫌なのと熱いのと怖いのと苦しいのがない生活。
想像がつかなくて僕は少し首を傾げてけいくんの哀しそうな目を見つめた。
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