アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1
-
「小林さん。」
その日は、前日から降る雪のせいで朝から大忙しだった。
電車は、いつも以上の超満員。
それに加えて時刻表通りにはいかず
このままでは仕事に遅れてしまう、と頭を抱えていたところだった。
ひしめき合う人混みの中で必死に耐えて
やっと駅につき電車から降りたとき後ろから声をかけられた。
振り返らなくても、それが誰からのものであるかは不思議とすぐに分かった。
自分の吐く息が白く溶けて消えてゆく。
振り返ったら泣いてしまいそうだ。
どうしてここにいるんだよ
どれだけ心配したと思ってるんだ
連絡一つも寄越さずに
…俺はずっと待っていたのに
こみ上げてくる様々な想い。
後ろの方で電車のベルが鳴っている。
言いたいことをあげればきっときりがない。
グッと奥歯を強くかむと大きく呼吸をして
声の方を振り返った。
その日、俺は仕事に遅刻した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 4