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センチメンタル 梶原SIDE 3
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「3組の吉野。」
「のぞみちゃんや!のんちゃんや!」
「どっちでもええわ。」
川本の勝利でガッツポーズと共に二人とも机に向き直り、また飲酒を再開する。
「ほんで?ほんで?」
缶ビールを口につけながら俺を見据えた一瞬の島田は
「うーん!付き合う事になった!!」
と川本の勝利よりも数段喜んだようにガッツポーズを見せた。
「えーーー。おもんない。」
本当に面白くない。と島田には悪いがキャラに伴わないような行動を非難する心の狭い俺がいた。
「はよ振られたらええわ。」
川本も同意らしい。
「お前らホンマひどいやっちゃなー。ええねんええねん、二人してそうやってバカにしてたらええねん。」
「なんや腹立つなー。彼女持ちの余裕か?お?」
川本が柿ピーを島田に投げつけたので、俺もそれに習う。
「いやぁせやけど、川本に上手なキスの方法教えてもぉたから早速使えるわ!な!」
幸せそうに語る島田の一言に驚いて笑いが止まる。
「お前ら、・・・ゲイか・・・。」
絶妙な間合いで俺が返せば、
「ちょ、マジな言い方すんなや!」
島田に向けられるはずだった柿ピーボムが次は俺へと標的を変えた。
「川本!やめてあげて!!・・・梶原はかわいそうな子ぉやねん・・・・。分かれへんねん・・・。な?」
島田のくせにと上から目線に腹が立った俺は再び標的を島田に定めて命中させると川本もそれに続くように島田へ当て始めた。
「やめろやぁ!」
と、一笑い。その後に島田が語る。
「ちゃうやん・・・。ほら、梶原も分かってると思うけど・・・俺、女の子と付き合った事ないやん?」
妙なシナを作る気持ち悪い島田を肴に三本目のビールを煽った。
川本は深夜放送のローカルチャンネルをあちこちへと回し、結局元のチャンネルに落ち着く。
「せやから、恋愛のスペシャルリストに教えてもろたん、な?川本先輩。」
「スペシャリストやし、そこは川本先生でええやんけ。」
的確なツッコミに笑っていたのに、恋愛とスペシャリストの単語を頭の中で一体化させて少なからずショックを受けてしまった自分に気付く。
一緒にいる日常が楽しすぎて今までその発想に辿り着かなかったのが奇跡だ。
川本だって年頃だからそういう話のひとつやふたつはあるに違いない訳で。
今まで付き合った子ぉとか知らへんけど、、、
スペシャリストいうくらいから、やっぱりキスとかうまいんやろうか・・・。
うまいやろうな。
「どう迫ってええか分からん言うたら川本が教えたるー言うてよぉ、」
島田の声は聞こえているはずだしその文章も自分は飲み込んでいるはずなのに、
「教えたるとは言うてへんしな!そういうノリやったやんけ!」
二人の会話が遠く聞こえる。
川本の、キスって、どんなんやねやろ・・・。
島田をからかう川本の唇を盗み見してまう。
そしてそこに自分を重ねたりしてアホみたいに。
「あーー!!ええやんけ!!どっちゃでも!俺はのんちゃん幸せにしたる!!キッスもしたんねん!!」
「知らんがな!どーでもええねんお前は!」
「そない言うて!あ、ほんなら言うたるぞ!川本やって、好きな奴おる言うてたやん!」
え・・・。
場の空気が止まる。
一瞬のはずなのにひどく長く感じた。
先ほどまで笑っていた川本もどことなく気まずそうに俺を一瞥して、何事もなかったかのように誰にともなく呟く。
「まぁ、」
知らなかった。想定すらしていなかった。
信じたくないような、なんで俺は知らんねんと文句のひとつも言いたいようなそんな束の間。
「え、おんの?」
怯えながら、それでもうっかり口が滑り、後悔は先に立たないのだと身を持って知る事となる。
「・・・・・おるで。」
苦々しい表情を拭うように最後の一口を煽った川本は観念したように声を絞り出し、真新しいビールを探り当ててプルタブを起こした。
「誰?」
恐る恐る聞く俺に答えるのは、川本ではない。
「こいつ!教えてくれへんねん。ありえへんやろ!!俺らのん知ってるくせにやで!!」
「ええやんけ別に。」
本当にめんどくさいと言うような顔をして新しい柿ピーの袋を雑な手つきであけ、おそらくは話を逸らす算段を巡らしているのであろう表情をする。
勢いの乗ってきた島田も川本のように残りを一気に煽り次のビールを手探りで探したが、もうなくなったらしく周りを見渡した。
「もうないで。」
川本が言うと仕方がないと言うように財布を取り出した島田は
「買うてくるわ。」
と一言言うとそのまま俺の部屋を後にした。
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