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スタートラインY その5
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立て付けの悪い扉がギィと音を立てて開く。
「・・・ここか。」
川本・・・。
腕で顔を覆っていた俺は答えず、川本はそれを気にした風でもなく横に腰を下ろす。
チャイムはさっき鳴り終わり、授業の始まりを知らせていた。
「よぉこんな寒いトコで寝てられるな。信じられへん。」
少し腕をずらして川本を盗み見た。
寒そうに中のベストの袖を伸ばして手を隠す。
白い息が空中へゆっくり上がり、空へ消えていく。
一人になって頭を冷やそうとここへ来たのに、俺を一人にさせてくれない、俺の好きな人。
「なぁ梶原ー。」
「・・・・・・・・。」
しばらくの沈黙の後、腕を掴まれて覗き込まれた。
「っ」
「起きてるやん。たぬ吉。」
いたずらっぽく笑う川本の顔が逆光のせいかよく見えない。
「・・・・・・なんやねん。」
起き上がった俺に満足したらしい川本は、フェンス越しに体育の授業をしているグラウンドを眺め、掴んだフェンスはカシャンと小さく音を立てた。
「元気ないからよぉ。」
心配してきてくれたのかと嬉しくなる反面、自分のおめでたい脳みそにイラついた。
原因はお前やねんけどな。
「元気あるよ。」
「そうかぁ?俺はまた・・・恋のお悩みでもあるんかと思たけどな。」
そうやって核心をついてくる川本が、好きやけど嫌いやねん。
俺を見る目が見透かされるように怖くなり、川本の制服ごしにフェンスの向こう側へと目をやった。
川本は、人の暴かれたくないところを平気で脱がしにかかってくる。
気にかけてもらえている事が嬉しいのに、ひどくイライラした。
少し自暴自棄になっているのかもしれない。
「あったらなんや。」
言ってすぐに棘のある言い方を後悔する。
川本が不機嫌そうにこっちを睨んで近付いた。
胡坐をかいていた俺の太ももに両膝を押し付けて体重を掛け、右手で顎を持ち上げられる。
俺は何が起こっているのか分からず動けない。
代わりに心臓が騒ぎ出す。
「・・・ほんなら。キスの方法教えたるわ。いるやろ、お前も。」
え、
川本の声は耳に届いているのに、言っている意味が理解出来ない。見えなくとも、きっと今の俺の顔は最高に間抜けだろう。
俺の返事を待つ気などなかったように川本は続けた。
「こうやってな、ここポイントな。」
後頭部と首の間を持たれ軽く引き寄せられる。
教えんでええ!そう言おうと思った言葉は喉に張り付いて出てこようともしない。
ただ呆気に取られて川本の動向を見守るしかなかった。
「こうやって、」
顎を持ち上げられ、川本の指が頬を撫でる。
また川本の匂い。
触れられた箇所が熱くて逃げだしたいはずの俺は、ゆっくりと近付く川本から目が離せないでいた。
あ。
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