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スタートラインY その9
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聞いていた部屋の番号を確認して中へ入ろうとノブに手を置くと、ドアについたガラスから中の様子が見えた。
津田の隣に座る川本。
・・・島田たちがセッティングしたんやろうか。
誰かのへたくそな歌が外まで漏れて、川本は楽しそうに笑っている。
世界が切り離されたように感じた。
自分一人だけが孤独で、それは誰にも気付かれないそんな感覚。
やはり帰ろうと踵を返すと中から川本が顔だけ出して
「おっそ!入れや!」
と笑顔を覗かせた。
気付かれないように小さくため息を吐いて覚悟を決めた俺は川本の後に続いて入室。
「こっち。」
手招きをする川本を遮るように急に飛び出した島田に絡み付かれる。
「うぉーーーーーい!遅いやんけー!まぁ座れや!な!」
肩を組まれたまま島田の隣のベンチシートではない単独のイスに座らせられて、
「お前こっちなっ。今は川本の邪魔したらあかんで。」
と耳打ちされ、川本は怪訝そうな顔をしながらも元の場所へ再び腰を下ろした。
喧騒の中にいるはずなのに感じる孤独は、独りで味わう孤独よりも寂しいのだと初めて知った。
津田と話している川本を見るたび、笑い合うたび、苦しい。
ジュースが知らないうちに酒にすり替わり、それが分かってからはひたすら酒に逃げた。
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