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雨と群青 その5
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梶原side
「あれ?川本は?」
退屈な授業と春眠のせいで居眠りをしてしまった俺はやっと休み時間に起き、いつもは悪目立ちする川本の姿を教室に探した。
「あー、さっき詩織が連れてったで。次の大会のなんとかがなんとかで。」
ひとつも要領を得ない島田の説明にはすでに諦めている。
詩織て誰やねん。
「清史、詩織と仲ええよな。」
横から割って入ってくる酒井が俺は苦手だ。もちろん人見知りも大いにそれを手助けしているが、何を考えているのか分からないような掴みどころのないうそ臭い笑顔、テンポのいい当たり障りのない会話、軽薄な女関係、その全てが苦手だと感じていた。
「まさかぁ?・・・まさか、ある?川本。」
「どやろな。あ、詩織て、マネージャーやで梶原。」
こうやって人の表情を読むところも、ついでに、何気なく癖のように指先で弄んでいる長髪の柔らかそうな髪も苦手だ。
「最近特に仲ええ感じやしなー。」
「せや!この前も気付いたら二人でこそこそ話してた!!」
「俺もそれ見てた。」
「川本、とうとう春来るんちゃう?」
嬉しそうな島田を視界からなくして机に伏せるが二人は俺の机から離れず、それどころか人の席へと腰掛けて二人で話し始める始末。
「あいつ誰かとこそこそ付き合ぉてんちゃうかなー思てたけど、案外ホンマに誰とも付き合ぉてなかったんかな。」
「え!あいつ誰かと付き合-てんの!?誰!?え?誰!?」
「知らんてっ。今から付き合う可能性出てくんで。詩織とか。」
「詩織かー!まぁ、分からんでもないな。キレイやし。」
鬱陶しい。
「島田くんは今回なんもせんときや。」
「え!なんで!」
「お前津田の事で散々どつかれてたやんけ。またやられるぞ。」
「せやった。あいつひどない!?部員全員メニュー関係なしに走らされたし!」
「やから。あいつの仕返しは倍返し以上やねんからもうなんもすな言うてんねん。こっちまでとばっちりくらうわ。」
「お、おう。」
うるさいうるさいうるさいうるさい。
俺の頭上で繰り広げる会話。
そしてまた、不安の種。
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