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雨と群青 その8
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「ん!」
だらしなく出していたシャツの裾から這い上がる手の冷たさに驚き、離れようとするがそれを許さないというようにより深く口内を舌で掻き回される。
「ん…ぅんんッ」
川本の指先から下半身にじわりと届く快感に焦り、慌てて服の上からその手を掴もうと試みるが器用に形を崩しては何度も胸を往復させる。跨がれた脚から伝わる川本の熱に驚いて目を開けると、先に開けていたらしい川本と目が合った。
「っあかんって。何しようとしてんねん!」
腕で川本を押し上げ体を離してシャツを直し、治まらない動悸を落ち着けようと胸に手を当てる。
「別になんも?」
「ウソつけっ。」
「ウソちゃうわ!」
いつものように強引に押し進めれば俺が折れると見込んでいるような気がしてならない。
「この前から。なんやねん。なんですぐそっち行くねんっ」
「行ってへんわ!お前こそ、なんで拒否んねん。」
したくないわけじゃない。好きやから。
したくないのかもしれない。全てを知られるのが怖いから。
したいけどしたくない。
自分でも分からない。
もっとゆっくり考える時間が欲しい。それだけなのに。
そこまで急いでなぜ今セックスしなければならないのかと思うとまた芽を出す不安材料。
「怖いねん・・・。」
「何が。」
男やし、ガッカリされへんかとか、
「何がて、普通に怖いやろ。」
ただの好奇心だけちゃうか、とか、
すぐ飽きてまうんちゃうかとか、
「・・・とにかく怖いからイヤや。」
疑ってしまう自分が、嫌いだ。
「・・・イヤなん。」
「イヤって言うか、「どっち?」
被せて畳み掛ける川本に次の言葉がうまく紡げない。
お前と違って俺は不安やねん。
なんでこうも違う?悩んだりせえへんの?
「・・・だいたい、なんで俺やねん。」
「そうやろ普通。」
「イヤや。怖い言うてるやん。」
「だから、何が怖いねんって!」
「さっきから何が何がて、分からへんねやったらお前がしろや!」
「俺はせえへん!!」
だからなんで?もう確定のように決めつけている川本に俺への思いやりの一欠片さえも感じず、それに余計腹が立った。
「はぁぁ?・・・意味分からへん。アホちゃう。」
「分かるやろ!」
「イヤや。知らん。」
「梶原。」
「いややって!」
「・・・だから、」
「イヤ。」
「お前、」
「イヤ。」
「聞けや!」
「いやや!」
「・・・・・・。」
今はこれ以上もう何も聞きたくない。
強気で押せば俺が毎回負けてくれると思っているのだろうが今回は違う。
なんでこない話通じへんねん。
ただやりたいだけみたいやん・・・。
そんなんがイヤやねん。
「・・・・・・も、ええわ。」
吐き捨てるように言った川本はそのまま屋上を後にした。
「はぁ・・・・。」
こんなくだらない事でケンカなどしたくはないのに。
片思いは辛いだけだと思っていたのに、結局のところ想いが通じても辛い事に変わりはなく、むしろその種類が増えていく。
想いが通じた?ホンマに?
・・・俺らって一体なんやねん。
付き合うてんの?
曖昧な線引きの関係性につける名前はなんだろうか。
苛立ちと同時に沸く切なさに心臓が絞られるように痛い。
心臓・・・こんな痛なんの?
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