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どんどんと、細い山道を登る。
曲がりくねった道を、徐行しながら注意して進んだ。
目的地はその先にある。
山田が眠っていてくれて、本当に良かった。
「スゲーなぁ」
頂上にはまだ程遠いというのに、窓からは否応なしに美しい風景が飛び込んでしまっている。
1000万ドルの、長崎の夜景。
山田にどうしても………いや、俺が山田と見たかったこの景色。
山田は喜んでくれるだろうか、それともいつものしかめ面で可愛くない台詞を吐くのだろうか。
………どっちでも良い。
ごちゃごちゃ考える全てがどうでも良くなる程、圧倒的な眺め。
まだ、頂上ではないというのに。
早く山田にこの景色をみせてやりたかった。
早く山田とこの夜景を眺めたい。
年甲斐もなく、胸が踊る。
ドクンドクン、心臓が力強く脈動する。
漸く辿り着いた頂上。
幸い人はまばらで、車は展望台の近くに停めることが出来た。
エンジンを切り、運転席を出て助手席のドアを開ける。
「おい、起きろ」
ゆさゆさと肩を揺さぶり、山田を起こした。
「………ん、首痛い。ぇ………何、どこ?」
目を開けようとした山田の瞳を、瞼ごと掌で塞いで
「ちょっと、このまま歩くぞ」
と、シートベルトを外して手を引いて車から下ろす。
「ふざけないで下さいよ。離し………」
「痛っ、いたたた!やめっ、お願いだから俺を信じてこのままでいろって、な?大丈夫、何も変な事はしねーから」
瞼に被せた掌を、山田は外そうともがき爪を立てる。
なんとか大人しく山田を従わせて………きっと、酒に酔っていなければこんなことを許しはしなかっただろう。
「そこ、ちょっと段差あるから足高く上げて」
「チッ………」
探り探り、山田がゆっくりと歩くのに合わせてのんびり進む。
目の前、一面に広がる幻想的な色とりどりの光の芸術。
逸る気持ちをぐっと堪えて、ゆっくりと進み山田を誘う。
「もうすぐ、もうすぐ………」
手すりに掴まるよう山田の手を誘導して、
「もう、良いよ」
パッと、俺は山田の顔から掌を離した。
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