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78 長崎出張、二日目。
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翌朝、仕事へ向かわなければいけない時間。
のそのそとベッドから這い出るようにして起き上がると、緩慢な動きで身支度を整える。
………行きたくないなぁ。
なんて、学生みたいな事を思いながら部屋のドアを開けると、廊下には既に山田が居た。
「おはようございます」
山田は、いつもと変わらない素っ気ない声でそう挨拶する。
「………オハヨ」
まだ、その顔を見る勇気はない。
一睡も出来ず、昨日は酒を飲んでもいないのにまるで二日酔いでもしたみたいにコンディションは最悪。
頭はボーッとして動かないし、眼は乾燥して真っ赤に充血してちょっとの光でも刺さるように痛いし、なんか関節の節々が軋んでるし………本当に散々。
「仕事なんですから、シャッキリして下さいよ」
相変わらずの可愛くないお言葉。
でも、こんな憎まれ口すら最近は言ってくれなかったから、なんだか新鮮だった。
いや、だからといってこんな事を後輩にずけずけと言われて面白い訳はないんだけど。
「うっせーな、分かってるよ」
言葉とは裏腹に、ふらふらと………真っ直ぐ前に歩くのですら覚束ない。
「ブラックのコーヒーでも飲んだらどうです?」
山田にそう言われ、俺はふらふらとロビーに設置された自販機に近付くとブラックのコーヒーを買う。
「あー………お前、何飲むよ?」
「えっ………」
どうやら自分の分まで奢って貰えるなんて予想していなかったらしく、いきなりの事に山田は返答に詰まっている。
「はい、ブブー。時間切れ」
そう言って、俺は勝手に山田の分の飲み物を選んでそれを放り投げてやった。
「わっ、ちょっ………僕、紅茶はミルク派なんですが」
俺が投げたレモンティーをしっかりとキャッチして、山田は相変わらずの減らず口。
「へーへー、さっさとどれが良いか言わないお前が悪いんだよ」
小さめの缶に入ったブラックコーヒーを一気に煽って、
「………オッサンくさい」
腰に手を宛て、上を向いて一気飲みをする俺の姿を見て、山田が呆れた声でそう言った。
「どーせ、俺はお前からしたらオッサンだろーよ」
深い溜め息と共に、吐き捨てるようにそう言って俺は空になった缶をゴミ箱に入れた。
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