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余韻に浸る間もなく山田は俺を残し、
「シャワーを浴びて来ます」
と言ってさっさと一人、部屋に備え付けてある狭いユニットバスへ消えた。
ザーザーと流れるシャワーの音が部屋に響く。
口の中に広がる青臭さと苦味が、酷く滑稽で情けなかった。
勢いのまま、やりたい放題好き勝手にして一体お前は何をやっているんだ、と、自分で自分を思いきりぶん殴りたい衝動に駆られる。
大きく溜め息をひとつ、胸にわだかまる嫌な気持ちを吐き出すようについてから気分を変えようと冷蔵庫を開けた。
「チッ………何もねぇな」
仕方なく、ベッドの端に座り直し背中を丸めて項垂れる。
冷蔵庫には、買っておいたペットボトルの水と缶コーヒーがある筈だった。
それがない、という事はここは山田の部屋なのだろう。
口に残る精液の後味を何とかしたかったのだが、山田がシャワーを終えてユニットバスから出てくるまでは、どうしようもなさそうだった。
“最後だから” “今日限り” 何度もそんな山田の台詞が頭の中でこだまする。
静かな部屋。
聞こえるのはシャワーの音だけ。
裁判で死刑宣告を受ける前の囚人のような、酷い気分だった。
今から山田はどんな表情で、どんな眼で俺を見るのか、どんな言葉を投げ掛けてくるのか………考えたくもなかった。
じっと、何もない床をただボーッと見詰める。
嫌な時間をちょっとでも先伸ばしにしたくて、この時が永遠に続けば良い………なんて、ガキみたいなしょうもない考えが浮かぶのに苦笑する。
そんな都合の良い話はあるわけがなくて、キュッキュッと、シャワーのお湯を止めるノズルの甲高い音が聞こえた。
ガサガサとタオルで体を拭く音。
口の中の苦味が一層増した気がした。
ドクドクと心臓が緊張からそのスピードを上げる。
ガチャリ、と扉は開いて。
審判の時。
「センパイ、まだ居たの」
「………シャワー、借りる」
山田の顔なんか見れなかった。
逃げるように脇をすり抜けて、俺は入れ替わりでユニットバスへ逃げ込んだ。
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