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先程まで山田が居たそこはむわっとした熱気に包まれていて、ただ立っているだけでじっとりと汗が吹き出してくる。
ずっとここに籠っていたい気持ちと格闘しながら、俺は手早くシャワーを済ませて山田の居る部屋へ戻った。
「………あ、あの………山田」
俯いたまま恐る恐る声を掛けると、疲れからか既に山田はベッドに横になっていた。
規則的なすやすやと落ち着いた呼吸。
寝ているのか、とも思ったがイマイチ確証が持てない。
いや、それは寝ていて欲しくないっていう俺のただの願望か。
顔を突き合わせたくはない癖に、構って欲しいから寝てないで欲しい………なんて、俺は我が儘だ。
「寝てる………のか?」
反応はない。
どうしようかと何気なく部屋を見渡すと、先程までは確かに無かった物がこれ見よがしにテーブルの上に置いてある。
俺の部屋の鍵である。
帰れ、という事なんだろう。
どうしようかと迷った。
一応、迷った………というか、山田の望む通りに大人しくちゃんと自分の部屋に帰ろうと思いはしたのだ。
………一応。
けれど、結局は帰らなかった。
帰るつもりは毛頭なかった………というか、でも、まあ………これでも一応は、葛藤したのだ。
ごちゃごちゃと自分で自分に言い訳をし、チラリと山田を見る。
しっかりと頭を拭いて水気をとって、それから俺はそろりと山田が寝ているベッドに滑り込んだ。
帰って欲しそうな素振りを見せておいて、可愛いらしい事に山田はベッドの端に横向きで寝ていた。
だから俺がベッドに忍び込むスペースは充分すぎる程に確保してあって。
こういう所が、天の邪鬼というか、いじましいというか………愛しくて仕方がない。
ピッタリと後ろから山田を包み込むようにくっついて、抱き締める。
ピクリとも動かなかった癖に、トクン、トクン、と穏やかだった鼓動がドクドクと早鐘のように変化した。
温かい、山田のぬくもり。
笑いそうになるのをグッと堪えて、俺は幸せを噛み締めながら眠った。
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