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長崎を抜け、福岡へ。
博多駅近くのレンタカー店。
途中、見つけたガソリンスタンドで給油を済ませ無事、車を引き渡す。
後は新幹線に乗って、出張は終わり。
向こうに着けば、あとは元の日常に戻るだけ。
「なぁ、山田」
山田は窓側の席を陣取り、さして興味もないだろう癖に顔を真横に向け景色を眺めている。
「なぁってば、おい」
「………なんです?センパイ」
他人行儀で、素っ気ない山田の声は心臓に悪い。
冷たい氷の刃でも突き立てられたみたいに、鋭い痛みが胸から全身に行き渡る。
「もう、俺とは仲良くしてくんないの?」
冗談めかして言いながら、スルリと腰に手を回す。
「セクハラはやめて下さい」
手の甲を思い切りつねられ、サッと反射的に思わずその手を引いた。
手を引いた変わりに、今度は言葉をぶつけてやる。
「昨日言ってた、最後ってさ、どういうつもり?アイシテル、なんて言って人のこと煽ってその気にさせてお前、一体俺をどうしたいワケ?」
小さな声で、山田にしか聞こえないように言葉で迫り、責め立てる。
「お前から迫ってきてさ、こっちは嫌だって拒んでたのを強引にヤって、飽きたらポイ?」
嫌そうに顔をしかめて、無視を決め込む山田の頭の中を覗いてみたい。
何を考え、どう思っているのか。
「俺、お前のことが好きなんだけどさ………諦めた方が良いの?なぁ、教えてよ」
しつこい男は嫌われる。
そんな事は分かってる。
だから、悲しいけど………胸が張り裂けそうなくらいには辛いんだけど、本気でコイツが俺の好意を迷惑に思っているようなら、諦めてやっても良いと思っていた。
………というか、諦めるしかない。
「諦めて………下さい。迷惑、です」
振り向いたその顔は、今からフラレようっていう俺なんかよりよっぽど辛そうで、弱々しく発せられた声はほんの僅かに震えている。
「諦めて、良いのか?」
はっきり大きな声で、もう一度そう問うた。
「………センパイ、しつこい」
ふいっと目を反らして、それきり山田は黙り込む。
目を伏せると、憂いを帯びた艶が出てゴクリと生唾を飲み込んだ。
念を押して確認しているのに、はっきり“嫌だ”とは言わない山田は卑怯だと思う。
ここではっきり、俺を突っぱねていたら俺は潔くお前を諦めてやったっていうのに。
「お前って、案外バカなのかもな」
山田の瞳は揺れていて、吐き出される言葉と態度はチグハグだった。
折角チャンスを与えたのに。
諦めて、コイツから離れてやろうかな………なんて思っていたのに。
ほのかに朱色に染まる頬が、それを拒んでたいるような気がした。
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