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#28
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比那side
神様。俺はやっぱり、酷いやつなんでしょうか。
東堂先輩と観覧車に乗ってから、東堂先輩の存在しか目に入っていなかった。
だから家に帰ってこいと言われた時は、本当に有頂天だった。
結局俺は自分のことしか考えてない。
誠がどんな思いで俺を送り出したか、何一つ考えていなかったし知ろうとも思わなかった。
そうして後悔したのは家に着いた数分後。
「あ…これ…」
ふと目に止まったのは、誠に渡すはずだったライオンのぬいぐるみと誠から貰ったコアラのぬいぐるみ。
その二つを俺の手のひらで転がす。
隣に誠が居ないだけで喪失感に見舞われ、声を聞きたいと浅ましくも思ってしまう。
東堂先輩が好きだなんて言いながら、俺は俺に優しくしてくれる誠に依存していた。
そんなこと、今じゃなくても薄々気づいていた。
気づいていて俺は、そのことから目を背けて楽な方へと歩んで行った。
その結果がこれだろう。
現に誠へ送ったラインは尽く既読スルーされ、一回だけかけた電話も無視された。
自業自得。
こう言われてしまえば仕方が無い。
俺には弁解する余地すらないのだから。
こんな中途半端な気持ちでここに居てもいいのか。
誠や東堂先輩の隣に立っていてもいいのか。
不安になる。
強情な俺はどっちかなんて選べない。
東堂先輩は好きだから手放したくないし、誠は優しくしてくれるから手放したくない。
二人とも、自分のものでいて欲しいのだ。
「俺って、こんなに性格悪かったんだ…」
汚い_____
今の俺はこの言葉に限るだろう。
自分のことばかり考えて、周りのことは二の次で、正直誠が俺のどこに惚れたか分からない。
東堂先輩だってこんな俺に、愛想つかさない方がおかしいだろう。
「比那」
不意に名前を呼ばれると、俺が反応する前に頭に手のようなものが置かれた気がした。
上を見上げるとやはり東堂先輩のものでなんとなくその手に嫌悪感を抱く。
俺、もう少し乱暴に頭は触ってほしいのに…
誠の触り方を思い出し、急にそれが懐かしく思えた。
昨日も触ってもらったはずなのに、大好きな東堂先輩が触ってくれているのに、恋しいと思う感触は誠の手だった。
いつの間に、こんなに絆されていたのだろう。
あれほど欲しかった東堂先輩の優しさが、今は不思議と欲しくない。
それどころか無意識に誠を求めている自分自身に驚き、それを必死に隠すかのように東堂先輩の手を求めた。
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