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「ー!、な……なんで、」
その人は、俺と目が合った瞬間、表情を変えることなくそう言った。
なんで、分かったんだ?
俺は昼にちゃんと薬を飲んだ。
薬の効果は6時間ほどで、まだ2時間しかたってないはずだ。
発情期中でもないし、薬が効いてるときは、βにはもちろん、αにだって俺がΩだなんて分からないはずなのに、なんでこの人は、なんで、
「え!君Ωなの!?」
「まじか。」
「全然気づきませんでした。」
他の人も気づいていなかったみたいで、スタジオの中が突然静まり返る。
みんな気づいてなかったのに、なんで、この人は俺がΩだってことを…
「こいつからすげー甘い匂いがする。みんな匂わないの?」
「いや、全然。」
「全然匂わないよ!」
「なんで祐樹さんだけ匂うんですか?あ、……まさか、」
………まさか。
聞いたことがある。
αとΩには【運命の番】というものがあるらしい。
運命の番同士は、発情期を迎えていなくても、お互いの本当に微かなフェロモンでさえ感じ取ることができ、自然と惹かれあい、番の中でも特に強い結びつきがあるとされている。
でも、生きているうちに運命の番と出会える確率はほとんどない。
なぜなら、αとΩが占める世界での人口比率の割合は、それぞれ約5%ほどで、それがまた、世界中に散らばっているとなると、その中から探すことは不可能に近いからだ。
だからこそ、【運命】というのだろう。
「まさか、祐樹さんと、この人が…?」
「おいおい、あんなのほとんど迷信だろう。」
俺も、初めて聞いたときは都市伝説のようなものだと思っていた。
…でも、もし、この人が俺の運命だったら?
頭の中が少しパニックになる。
「……ありえねぇ。Ωってだけじゃなく、ましてや男となんて気持ち悪い。」
俺はそのたった一言に頭をぶん殴られたみたいだった。
俺も、男となんてごめんだ。
でも、俺は男としか番うことができない。
じぶんがこんな体だから、女の人を抱くことはできても、結婚して一生を共になんてできるわけがない。
自分の中をどす黒い感情が埋め尽くしていくような感じがして、気づけば俺は、そいつの胸ぐらを掴んでいた。
「っふ、ざけんな!お前になにがわかるんだよ!俺だって、俺だってこんな体を自分から望んだわけじゃない!こっちこそお前みたいな顔だけのサイテー野郎は願い下げだよ!」
俺はそう言ってスタジオを飛び出した。
他の人たちは突然の出した俺の大声にびっくりしていた。
「悠莉くん!」
健くんが後ろから俺のことを追いかけてくる。
俺はちょうど地下で止まっていたエレベーターに乗り込みボタンを連打した。
健くんがギリギリで滑り込んできた。
「っはぁ、は、ぁ……ふぅー。悠莉くん、ごめんね。古澤くんも普段はあんな態度をとるような子じゃないんだよ。っていっても、口が悪いのは変わらないけど、相手のことはちゃんと考えられる子で、」
「…分かってる。」
「、悠莉くん…」
「あいつのダンス綺麗だった。心から腐ってるやつはあんな風に踊れないよ。」
……あの4人の中であいつのダンスは特に目立っていた。
繊細で、綺麗で、でも自分の体の何倍も大きく踊ってて、なんか、あいつの周りだけ時間が止まっている気がした。
心の奥の深いところを掴まれた感じがした。
…それから、さっきあいつに掴みかかったとき、今まで嗅いだことのないような甘い匂いがした。
父さん…ごめん。
…もしあいつが運命だとしても、あんなことを言われたら、もうあの人たちとはもう会えないよ。
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