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俺は薬を飲ませてもらい、どうにか症状が落ち着いた。
突然キスされたときには、こいつも他の奴らと同じなのかと思い、その恐怖にまた身体が震え始めたが、あいつは俺の異変に気づき、落ち着くまで何もせずにただ抱きしめていてくれた。
俺は、その温もりに何故か不思議と恐怖を感じなかった。
…こんなやつ初めてだ。
なんであんなこと言ったのに、優しくするんだよ。
「ごめん…もう大丈夫、だから。」
「そうか。」
俺はあいつの腕の中を抜け出し、早くここを出ようとかばんを掴む。
「…悪かった。」
突然あいつが謝った。
「……何のことですか?」
「俺はひどい言葉でお前を傷つけた。」
「そんなの別にもういいですよ。」
「よくねぇよ!……俺の気がすまない。」
「………」
「……それに、あいつらがお前のことすごい気に入ってたから、お前が嫌じゃなかったら俺らのこと、考えてみてほしい。」
あいつはそう言って頼むと頭を下げた。
「…こちらこそ、さっきは助けてくれてありがとうございました。」
「いや、」
「……明日もここで練習してるんですか?」
「は?」
俺はさっきまであんなに優しい体温をくれていたこの人を心の底から嫌いになることができずに、俺に笑顔で話しかけてくれたあの3人のことを思い出して、また来てみようと思い、そう質問した。
俺に断られると思っていたのか、あいつは変な声を出した。
「あ、いや、やってる。今日と同じ時間で。」
「分かりました。じゃあ明日も見に来ますね。それじゃあまた。」
俺はそう言い残し、エレベーターに乗り込む。
そして、ドアが閉まった瞬間、その場に座り込んだ。
「……何なんだよ、これ。」
さっきまであんなに会いたくなかったあいつに抱きしめられて、ひどく安心していた自分がいた。
そんな自分が分からず頭を抱える。
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