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35《祐樹side》
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あいつと初めて会った次の日、あいつが正式にメンバーに加入することが決まった。
他の3人が自己紹介をしている間、俺は、あいつが誰かに触れられるたびに、なぜか腹が立った。
「……はぁ。」
昨日からあいつを見ているとなんか調子狂う。
俺も流れで軽く紹介したすぐ後に、こんちゃんが入ってきて、練習が始まった。
あいつは俊のパートを覚えるために、スタジオの端で動画を見始めた。
まぁ、30分くらいはかかるだろうと予想して、俺たちは俺たちで練習を始めた。
…それから約10分くらいたったころ、あいつはおもむろに俺らの後ろに立った。
俺らの動きを見るために立ったのかと思い、たいして気にすることなく、もう一度通すために最初の位置に着く。
〜〜♫♩♪♬
曲が流れだし、俺たちはいつも通り踊り始めた。
ふと、目の前の壁一面の鏡に映ったあいつの姿が目に入った。
……………踊ってる、しかも完璧に。
他の3人も気づいたみたいで、ちゃんと踊りながらも、鏡越しにあいつを盗み見ている。
…それにしても、うまい、うますぎる。
あいつは、ついさっき覚えたばかりのはずの曲を、まるでずっと踊り続けてきたかのように、滑らかに、繊細に、ときに激しく、指先のその向こうまで神経が通っているかのように、……そして、すごく楽しそうに踊っていた。
その姿は、あまりにも神々しく、思わず息をするのを忘れてしまいそうだった。
…ふと、俺の中で何かが引っかかった。
こいつの踊りを、どこかで見たことがある気がする。
そんなことを考えながら踊っていると、いつのまにか曲が終わっていた。
あいつは、曲が終わって、パッと閉じていた目を開けた。
その瞬間、あいつが纏っていた、独特な、全ての人を呑み込んでしまうような、そんな雰囲気もパッと消え去った。
そんなあいつに、拓人が思い切り抱きついて、何か叫んでいた。
……さっきの、あの違和感は何だったんだろうか。
俺はその後の練習も何だか身が入らず、結局何かわからないまま練習を終えた。
練習が終わった後、拓人とあいつが話をしていた。
「ねぇねぇ!ゆうくんってさ、ダンスすっごい上手だけど、何かやってたの??」
「あ、俺、小学生のときに、この事務所のダンススクールに通ってたんです。」
「そうだったんだ!クラスは?」
「え…っと、S、でした。」
「S‼︎⁉︎ 小学生で⁉︎ ゆうくんって見かけによらず、凄いんだね!!」
拓人の声が大きすぎて、集中してなくても会話が耳に入ってくる。
「!………もしかして、」
…あいつの言葉に、ふと昔のことを思い出した。
俺は幼稚園のころからこの事務所に所属していて、ダンススクールには、小学生のときから通っていた。
そんな俺は、小6のときにやっと、S〜Cまであるクラスのうち、Aクラスに入ることができた。
そのころ、Sクラスに凄い奴が入ったらしいという噂が流れた。
そいつは、小3という歴代最年少の年齢で、中学生や高校生ばかりのSクラスに入り、しかも、飛び抜けて上手いらしい。
そして、小さくて女みたいに可愛い顔をしているという噂から、滅多にそいつの姿を見ることができない俺たちの間で、“姫”と呼ばれていた。
…ある日俺は、コーチにどうしてもと頼み込んで、遅くまで踊りを見てもらっていた。
思っていたよりも遅くなってしまい、急いで帰ろうとスタジオを飛び出す。
そのとき、こんな時間には誰もいないはずのSクラスの電気がついていた。
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