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「ゆうくんおはよー!」
事務所の入り口にちらほらと見える記者の人たちを横目に駐車場に車を止め扉を開けると、いつも通り元気いっぱいなたっくんの、恒例の挨拶が待っていた。
「おはよう、たっくん。」
俺が挨拶を返すと、パッと体を放し、早く行こう!と僕の手を引っ張った。
後ろから母さんの、転ばないようにね~という声が聞こえてきたので、俺は返事の代わりに手を振った。
報道陣の人たちとは会わないように別のエレベーターを使い、会見場と同じフロアの控室に辿りつく。
たっくんが楽しそうに鼻歌を歌いながら扉を開けると、もうみんな揃っていた。
「お、悠莉、やっと来たか!」
「ゆうくん、おはようございます。」
…あれ?集合時間、10時じゃなかったっけ。
壁に掛けてある時計を見ると、まだ9時30分を指していた。
「あぁ、違うんですよ。みんな早く来すぎちゃったんです。」
もしかして時間を間違えたのかと焦る俺に、伊吹くんがクスッと笑いながら教えてくれた。
「そうだよー!待ちきれなかったの!」
だから、ゆうくんのこと下で待ってたんだ!とたっくんが俺の隣でニコニコしている。
たまたま会ったのかと思っていたけど、そういえば荷物も持ってなかったな。
伊吹くんの後ろにいる龍さんは、そんな僕たちを見て笑っていた。
…みんなでくすくすと笑い合っていると、ふと、壁にもたれるあいつの姿が目に入った。
俺の視線に気づいたのか、あいつが顔を上げる。
でも、目が合うとすぐに視線を外した。
…少し胸がざわっとする。
いつもとは違う、そんな感じ。
俺が声をかけようか迷っていると、後ろの扉が開き、父さんと母さん、その後に健くんが入ってきた。
「みんな、おはよう。今日の流れを説明するから、集まってくれ。」
そんな父さんの、いや、社長の言葉に、部屋の空気も少しピリッと引き締まった気がした。
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