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「返して、て言うか捨てないでください。」
椿は真剣な表情で要に手を伸ばす。
「いらないじゃん。」
「でも俺にとっては大切です。」
そう言った椿にムカついて要は箱ごとネックレスを壊してやろうと床に叩きつけた。
要は自分が昔あげたものをまだ大切そうに持っている椿が理解できなかった。
…
しばらくしても割れた音は部屋には響き渡らずあいかわらずの沈黙と椿の驚いた顔があった。
そして要の後ろにある影と体温。
「はぁ…要さん、簡単に人のものを壊したらダメですよ。」と要の手を抑えて片手で要が持っているものをとった。
「だってこれはいらないものだから…何にもいい記憶なんて詰まってないんだよ…」と要は理由をつける。本当はムカついて壊そうとしただけだなんて言えない。
相沢明弘が壊れるのを防いだとはいえ、椿は少し胸が痛んだ。二人が近い距離で手が触れ合っているだけなのに。
こんなことで何やっているんだと自分でバカだとわかる。
「はい、秋原さん。」
そう言いながらさっきのガラスの箱を渡してくれる。
「ありがとうございます…」
「椿、そんな悲しそうな顔せんでもええよ!」と光岡は察したのか笑顔で言ってくれる。
「…」要は黙って自分の手を握っている。
そして少し頬を赤らめているのを見て、椿は要は本気なんだと今になって気づいた。
どうしよう…胸が痛い…
「椿、お前が何を思っているのかわかるんやけど…」光岡隼人が椿を引き寄せて呟く。
「覚えとき、俺はお前のこと本気やからあいつにばっか気とられとると何するかわかんないからな。」光岡は冗談交じりで言ったにもかかわらず、椿はびっくりして固まる。
そしてそんなに自分はわかりやすいのかと恥ずかしくなって俯く。
「ははっ可愛い反応。」とご機嫌が良くなったのか「じゃあ俺帰るわ。」と言った。
それを聞いて要も帰ろうとする。
でもここで相沢明弘も一緒に行くとなるとまた嫌な気持ちになることが目に見えているので相沢明弘には「話があるのでもう少しお邪魔して言ってくれませんか?」とお願いする。
「…はい、大丈夫ですよ。」
椿は光岡と要が帰ったのを見送ってから相沢明弘と二人きりになってしまった。
正確に言うと自分がそう言う風にしてしまった。
「相沢さん…すみません。」と二人きりになった瞬間椿がいきなり謝るので驚く。
「秋原さん?どうして謝っているんですか?」
「だってさっき相沢さんが潔癖症で人に触られるのすら嫌なんですよね?」
「まあ親しくない人とかは特に嫌ですね。でも我慢はできます。」
「我慢か…つ、つまりその…」
「はい…」
「この間みたいなことをしてしまって…嫌なはずなのにあんなことしてしまって…すみません。」
「あんなことって?」とちょっと笑った感じで聞かれた。
「えっ…えーっとそ、そのですね。っていうかわかってて聞いていませんか?」
「…」ちょっと口元が笑っている。
「っだから…その…押し倒したり、く、口付けとか…ホテルでああ言うことをさせてすみませんでしたってことです。」
「そんなことを…謝っているんですか?」
「えっ?そんなことって…だって…」
「俺嫌なことはきっぱり相手に言うので…俺は軽い気持ちでああ言うことをしたわけじゃないですよ。」
鋭くでも優しさが入った彼の目と視線が合う。
軽い気持ちじゃないと言うのはどう言う意味か聞こうとするけど椿は言えなかった。
でもそう言われてなんだか特別と言われたみたいで嬉しくなり、今だけ自惚れてもいいのだろうかと自分に問う。
「それに椿さん、演技以外…、初めてキスした相手が俺なんですよね…」
「…はい。」
「…」
「むしろ相沢さんで本当に良かった。」
と言いながら椿は少しだけ本当の笑顔で笑えた。
「…」
相沢明弘が黙っているから彼の方を向くと片手で少し赤くなっている顔を隠していた。
「…あっ…」
やっと椿も自分が恥ずかしいこと言ったことがわかる。
「椿さん、あんま無防備にそういうこと言っちゃダメですよ。」
「そ、そうですね。でも俺、簡単にこういう事人には言いません。だから…って俺は何を言ってるんでしょうね。」
椿はテンパりながら話をする。
ダメだ…制御が効かない。
「そ、そう言えば相沢さんが甘いの食べているの見たことがないんですけど…」
椿は話をあからさまに変える。
「ああ、俺甘いのはそんな好きじゃないので。でも一応作れますよ。」
「作れるんですか?洋食も作れるんですよね!好きですか?」椿があまりにも熱心で聞いてくるから相沢は少し笑う。
「秋原さん洋食好きなんですか?まあていうか俺は和風派ですけど。」
「和風かぁ…俺一応作れますよ。ってなんだか面白いですね。相沢さんが好きなものは俺が作れて俺の好きなものは相沢さんが作れる。」
椿は少し繋がりがある感じに思えて嬉しくなる。
「今度作りましょうか?味は保証します。一応家系のおかげで俺の専属シェフから教わったので。」
「えっ?専属?家に一人一人いるんですか?すごい。」
「普通じゃないんですか?」
「ないですそんなの!というかうちはなんか和風系の家なのでそれに合わせて作れる料理は和風ってだけです。」
「そうなんですか?」
「はい。」
「秋原さんそう言えば気になったんですけどさっき要さんが割ろうとしていたものって大切なんですか?」
「…あれですか…はい、とっても大切です。相沢さんだけに話しますけどあれは要が唯一俺にくれたもので双子として最初で最後の思いやり…みたいな感じでもらったんです。だからどうしてもこれは捨てられなくて。」
「最初で最後…か…」
そう相沢明弘は何かを思い出したように考える。
彼にもそういう記憶があるんだろうと椿はわかる。
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