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「本当に良かったです。」
そう相沢が言って手を離されたかと思ったらぎゅっと抱きしめられる。
少し甘いような爽やかないい匂いがして椿は相沢明弘との距離を実感する。
恥ずかしい…そう思う気持ちよりも嬉しい。
椿もそっと不安げに大丈夫と言うように手を回す。
椿の目からは急に涙が出てきて気づかれないように涙を流す。
それでも分かったのか頭を撫でられた。
そんなことをされるともっと涙が出てきてしまうのに…
一回出てきた涙は抑えきれずポタポタと落ちていく。
どうすれば相沢さんへの好きな気持ちを許してもらえるの…
相沢はただ弱っている椿には何も言わずそばにいてくれる。
相沢は正直言って秋原誠也に対して強い怒りがあった。
椿をここまで弱らせてそれを意図的にやっているから。
相沢自身、自分の椿への気持ちはもうとっくにわかっている。
でもそれを言えないのはただ椿に辛い思いをさせてしまうだろうから。
病室に二人でいるとコンコンと音と共に春日の声が聞こえてきた。
「ヤッホー相沢〜、椿〜」
椿はそれにびっくりして相沢から体を離した。
泣いていた椿の目と相沢の目が互いに合って固まっていると春日が入ってきて二人を見ながら頰をかく。
「えっ…と…なんか俺入っちゃいけないかな?…じゃあ失礼しま…」
「いや、大丈夫。」
相沢が答えて椿もそれに続いて言う。
「そ、そうそう、全然大丈夫。」
「ふう〜ん。ま、別にいいけど。」なんて春日は表情を変えてニヤニヤしながら言う。
「あっそうそう椿が起きててよかった。それよりご飯食べたら?てかもう持ってきたー」
春日が体に良さそうな卵が入ったおかゆを渡す。
「じゃあごゆっくり〜」
そんなことを言って部屋を出て言ってしまった。
「えっ…でも今手に力が入んないんだけど…」
椿は自分が犬食いをすることになる可能性が高い事に頭の中で絶望感がいっぱいになった。
手に力が入らなければ犬食いしかない…
どうしよう…
「俺が食べさせてあげます。」
ちょっと面白半分で相沢が言う。
「えっ?食べさせる?相沢さんが?」
「はい。」
椿の顔は真っ赤になってそれを楽しそうに見る。
「じゃあ秋原さんはそのまま食べるんですね。別にいいですけ「た、食べさせてください…」
「…ふふっ。はい、じゃあ口開けてください。」
椿は目を瞑ってあまり大きくはない口を開ける。
恥ずかしさのあまり、食べ物を味わっている余裕がない。
もぐもぐ食べる椿に「素直で可愛い。」と少し笑顔で言う。
自分が可愛いなんて言われるとは思いもしなかった。
恥ずかしさでいっぱいで椿は下を向いて緊張で味もわからないまま食べる。
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