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帰郷
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今年も激戦が繰り広げられた
スペイン・バルセロナから飛び立つ。
やっと日本へ、みんなのところへ帰れる。
今年はいい報告と一緒に。
+ + + + + + + +
そして日本…九州…
「あー!やっと長谷津だー…」
「んー、やっぱり長谷津は落ち着くね。」
駅を出るとそこには、少しの間離れていたけど、
懐かしく、見慣れた景色。
やっぱり僕にとってはここが一番だ。
「勇利ーーっ!!」
「ぅわっ、ミナコ先生っ!」
突然タックルされて死ぬかと思った…
でも…
「グランプリファイナル銀メダルおめでとう!」
喜んでくれるのは、凄く嬉しい。
「ほら!早く帰るよ!ヴィクトルも!
みんな家で待ってるわ。
今夜は盛大にパーティよ!」
「ははっ、ミナコは元気だなぁ」
「何言ってんのよ。あんたも充分若いじゃない。」
これまで見てきたものと何ら変わらない日常。
またそこに、笑顔で戻ってこれた。
こんなにいいことは無い。
ミナコ先生の車で家に戻る。
みんながどんな反応をしてくれるのかわからなくて、
少し緊張していた。
「「「勇利!おめでとう!」」」
玄関を開けたらそこには、たくさんのクラッカーを持って
みんなが待ってた。
父さんも、母さんも、真利姉も、西郡ファミリーの皆も、
僕が知ってる街の人たちも…
たくさんの人たちが笑顔で迎えてくれた。
「勇利?」
ヴィクトルが、心配そうな顔で
僕の顔をのぞきこんでくる。
「ごめんっ…うれ、しくて…」
自然と涙が溢れてきた。
僕は1人で戦ってたんじゃないんだってわかる。
『僕は1人じゃない。』
この瞬間、僕はこのことに自信を持てた気がする。
「勇利。ほら、早く上がっておいで。
今日は勇利の大好きなカツ丼だって用意してあるよ。」
「ゔん…みんな、ありがとう!」
「こんなの、当たり前でしょう?
みんな、自分からここに集まってきたんだから。」
その夜は本当にパーティだった。
僕はあまりお酒を飲まなかったけど、
みんなが僕のことを祝ってくれて
最後らへんはもうどんちゃん騒ぎだった。
すごく、いい日になったと思う。
「…あれ、ヴィクトルは?
ミナコ先生知らない?」
「んあ?ヴィクトル?」
ミナコ先生もだいぶ出来上がってしまっているようだ…
「ヴィクトルなら、さっき外行ったはずだよ」
「ありがと」
もうすぐ年をこす12月の後半。
こんな夜に外なんて…
寒いはずなのに…
ヴィクトルを見つけるために外に出る。
しばらく歩いていると、橋の上にヴィクトルをみつけた。
「ヴィクトル、寒くないの?」
「勇利…ははっ、勇利は面白いことを言うね。
俺、ロシア人だよ?こんなの寒いに入らないね」
「あ、そっか。でもなんでこんなとこにいるの?」
「あぁ、少し飲みすぎちゃったからね。
頭を冷やそうかと思って。」
「そっか…」
「……。」
ヴィクトルの隣に立って川を眺める。
何も変わったことは無い。
僕は時々、ヴィクトルがわからなくなる。
何を考えてるのか、
何をしたいのか、
何もわからない。
けど僕は、ヴィクトルについて行くしかないんだ。
ヴィクトルはいつも僕をすごいところまで
連れていってくれる。
そうやって信じてるから。
「勇利。」
「なに?」
「ちょっと、リンクについてきてくれるかな。」
「え、でも…」
「大丈夫。鍵だって優子に借りてきてるし。
シューズだってあそこに置いてきてある。」
「うん、わかった」
ヴィクトルはいつもと違う顔をしている気がした。
あまり変わらないはずなのに、
すごく、違和感を覚えた。
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