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表情
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ヴィクトル side
勇利が本格的な練習を始めてから約2週間。
1週間前くらいから、
俺も自身の練習を本格化させていた。
もちろん勇利のことを見る時間も作りながら。
「ヴィーチャ。今日はそのくらいにしておけ。」
「あぁ、ありがとうヤコフ。」
「それにしても、勇利はいい表情をするようになった。
お前のおかげか。」
「そんなことないさ。
彼は自分で努力してる。」
「だが、やはりお前が目をつけただけあるな。
無理だけはさせるなよ。」
そう言い残して、ヤコフは帰った。
俺が見る時間が減っても、
勇利はいつも最後まで練習していた。
俺が作ったプログラムを滑る勇利。
そこには、前回のプログラムまでにはなかった
違う何かがある。
まだ、練習を始めたばかりのこのプログラム。
勇利がこれを本当の意味で完璧に滑りきった時、
伝わってくる何かがあるはずだ。
俺はそれを思ってこれを作った。
「勇利!そろそろ帰ろう?」
「あ…ヴィクトル…」
「無理をするな。
無茶して練習を繰り返して何処か痛めたらどうする。
勇利のラストシーズンが台無しになるぞ。」
「うん。そうだね。やめとく。」
なんというか…
一緒に暮らしていて僅かに気づく程度だから、
きっと俺以外には分かってない。
この曲で、このプログラムを滑り始めてから、
勇利の表情には時々、妖艶さが浮かぶようになった。
それも決まって、俺を見る時だけ。
気付いていないように振る舞うのが精一杯なくらいだ。
絶対、勇利自身も気付いていない。
天然無自覚は、本当にタチが悪い……
「はぁ…」
「どうしたのヴィクトル。ため息なんてついて。」
「いや、なんでもないよ。帰ろうか。」
それから2週間後くらいから、
勇利の雰囲気が変わった。
……………悪い意味で。
これは、まずい…
表情からも分かる。
泥沼にはまったな、あれは。
一度はまると抜け出せない。
足掻けば足掻くほど、更に悪い方向へと進んでしまう。
つまり、いくら練習しても、
わからなくなるんだ。
何ができてなくて、何ができているのか。
わかるなくなるから練習内容が曖昧になり、
更に進歩はなくなる。
終いには進歩がない自分に嫌悪感を抱き始める。
選手としての精神から腐っていくパターンだ。
早くどうにかしないと、どうにもできなくなる。
俺が気づいた時には既に、
元々精神が強くない勇利は危なかった。
だから、一か八かの方法に出た。
「勇利。1週間、リンクには行くな。
1回頭を冷やせ。」
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