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病気。 Ⅱ
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勇利 side
僕が体調を崩していた3日間。
ヴィクトルは練習にも行かず、
極力僕のそばにいてくれた。
それは僕にとってひどく安心できたのと同時に、
『ヴィクトルの邪魔をしている』という
罪悪感に苛まれるようなことだった。
だから、僕なりに考えた。
他の人に頼る。
ヴィクトルじゃない誰かに、
少しずつ支えてもらう。
まだロシアに来て約1ヶ月。
信頼できる人なんて少ない。
けど、きっと皆いい人たちだから、大丈夫だ。
とりあえず、ユリオにいうところから始めてみよう。
ヴィクトルにもこのことを言った。
きっと認めてくれたんだと思う。
でも、僕が倒れた日から、
ヴィクトルはずっと、何か考え込むような表情をしてる。
多分、僕のこと、なのかな…
こんな僕を、ヴィクトルは面倒だと言って
捨ててしまわないか、すごく不安だった。
そして、久々にリンクに来た今日。
練習が始まらないうちに話しておいた方が楽だと考え、
ヴィクトルと別れてユリオを探した。
それだけのことで少し不安になりかけたが、
僕のリンクメイトたちが皆、心配して話しかけてくれた。
みんなの中に僕の存在がある。
家にいる間そのことを不安に感じていた僕だったけど、
皆のおかげで少し気持ちが軽くなった気がした。
ユリオはどこかな?
周りを見渡すと、ちょうど隅っこで柔軟をしながら、
何か考え込むような表情をしていた。
……ユリオにも何かあったのかな…
「ユリオ、ちょっと話したいんだけど…いい?」
「あ?あぁ…」
やっぱりおかしい。
いつもだったら「なんだよカツ丼のくせに」とか
絶対言ってくるのに。
「ちょっと、他の人には聞かれたくない話なんだけど…」
「あぁ…じゃあ、外でも行くか。」
「あ…うん。」
なんだろう…ユリオがいつもみたいに子供じゃない。
そして、外。
5月のロシアはまだ日本でいう春先くらいの気温だ。
やっぱりまだ少し寒い。
「で、なに。話って。」
「うん…僕さ、多分病気なんだ。」
「はぁ!?おいどういうことだよ!」
掴みかかってくるような勢いで怒鳴るユリオは
やっぱりロシアンヤンキーだ…
とか、勝手に冷静になりながら、
ユリオを落ち着かせるら。
「ちょ、落ち着いてよユリオ。
大丈夫。スケートが出来なくなるとか、
そんな身体的なものじゃないから。
僕、多分だけど、『パニック障害』なんだ。」
「…は?なにそれ?」
「神経症の一種だよ。」
「余計にわかんねぇ…」
「ははっ。やっぱりユリオはまだ子供だね。」
「うるせぇ」
いつもの調子が戻ってきたユリオに、
僕も少なからず安心できた。
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