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2016.10.30 1:20
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「はは、なんかスッキリしたわ」
ご機嫌にそう言うと、髪を自らの手で梳かし細かい毛を払い出した。「全然髪の毛ねー!」って元気な声が続いた。
「それなら何よりだわ。まあ、髪乾かしたらもーちょい短くなると思う」
「コレだと今年さみーだろーなあ」
「じゃあ切らなきゃ良かったろ」
悪態を一つ口にした途端、横顔でしか確認は出来なかったが、ケラケラと明るく笑っていた表情が少しだけ暗く重いものへと変わった気がした。
「…御園」
「切ったのはさあ、イメチェンだよ。別れたから、このままうだうだしてそうなのを切った」
「……」
もう続かないだろうと踏んでいた話の続きが始まるとは思っておらず、名前を呼んだのも圧されてシンと黙ってしまう。
「それと、言われたことな。俺に他に好きな人がいるだろって」
「…は!?」
思ったよりも大きく出た声に彼以上に自分が驚いたが、今はそんなことはどうでも良かった。大きく目を見開いた彼の表情もやんわりと変化をし、目が柔らかな弧を画く。
「ふ、俺も同じ反応だったわ。本当それだよ、は?ってなったわ」
暗い顔のまま、暫く動いていなかった手が伸び、切ったばかりの襟足を捻りながら長さを確認した。そしてそのまま一呼吸置いて、再び口が開かれた。
「お前のこと、好きだったんじゃないかって。いや、好きなんだろって、言われた」
「…え?」
「過去形から現在進行形に丁寧に直されたよ。スゲーよ女子って」
「な、ちょっ…」
慌てふためくのを他所に、腰掛けていた椅子から勢いよく立ち上がり、今まで見えていた後頭部は見えなくなる。と同時に、真っ赤に染め上げた顔がこちらに向き直った。
「以上。これ以外は、言わない」
「えっ待って話が読めな…」
「この話したことが今日の代金だからな、ヨロシク」
そう言うと首に巻いていたタオルを取り、くしゃくしゃに丸めて洗濯物カゴへ投げ落とされる。
「御園、待って」
「待たない。今日はもうこれまで」
「いや、それはずりぃって」
「ずるくない。俺だって寒さを蹴ってまで、決心するために髪の毛を切ったんだよ」
どういう言い分だよって突っ込みたくても、色んなところがショートしたお陰で思ったことが口から出てこない。それでも、手だけはと必死に硬直してしまいそうな身体を動かして、彼の腕を掴んだ。
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