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(母様……、どうして……)
ここは兵のサバイバル練習で時々使われる休憩スペース。
厚い石の壁で作られており、防空壕の役割も果たしている。
シエルは逃げている途中に、この1人分のスペースしかない小さな防空壕に押し込まれた。
そう、母親である王妃にだ。
「母様…、父様……っ」
シエルは両親や国民が心配で何度も外へ出ようと試みるが、扉は固く、ピクリとも動かない。
外からは大きな爆音聞こえ、まだ精神的にも成熟していないシエルはビクッと身を縮こませた。
数時間が経ち、音は止んで静寂が訪れた。
しかし扉は開かず、シエルはこの狭いわずかなスペースで、常備されていた毛布に身を包み、非常食を食べて約1ヶ月を生き長らえた。
誰も助けに来ない。
その現実は母の生死を物語ってるも同じことだった。
しかし、シエルは母の生存を信じ、ただ敵国に囚われただけなのだと必死に自分に言い聞かせて、何度も何度も石の扉を叩き続けた。
ーーガラガラガラッ
あの襲撃での爆発や、シエルが1ヶ月間叩き続けたことにより脆くなった扉がとうとう崩れ落ちた。
シエルは防空壕の外へ出て、そして絶句した。
豊かで笑顔に満ち溢れていた街はなく、辛うじて焼け跡として残っている建物が数カ所あるだけだ。
そしてシエルは意を決して、みんなが逃げたはずの城内へ足を踏み入れた。
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