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3-2 お花畑
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門をくぐり、新緑の桜並木が続くアプローチを抜けて。
屋敷の前に到着。
運転手に礼を述べて、車の外に出る。
一歩、一歩。
もう、昇ることがないかもしれない大理石で出来た階段を進む。
雨の日は、何度も転びそうになっていたな。
思い出していると、少し緊張がほどけてきた。
階段を昇っている途中で、内側から玄関の扉が開かれた。
「お帰り、奏(かなで)」
桜宮家32代目当主、桜宮 湊(さくらみや みなと)。
すらりと伸びた長身と鼻筋の通った顔立ち。
仕事中は容赦なく毒舌を吐く唇も、家に帰れば甘い言葉しか出てこない。
俺を映す翡翠色の瞳は、すでに潤んでいて。
俺の方が貰い泣きしそうになる。
「ただいま、父さん」
俺が両腕で抱えていた荷物を、片手で軽々受け取り。
もう片方の手で、俺の身体を優しく抱きしめてくれる。
「お、お帰りぃ・・・」
震える声の主を探して、父さんの腕の中で首を動かせば。
すでにボロボロと涙をこぼす、俺と同じ淡い水色の瞳とぶつかる。
父さんよりも頭一つ小さな身体は、ブルブル震えが止まらない。
俺を産んでくれた、桜宮 美咲(さくらみや みさき)。
引く手数多のαの女性なのに・・・
父さんに一目ぼれして、何年もかかって口説き落とした俺の母親。
俺がΩと分かってから、ずっとずっと自分を責めていた人。
父さんに褒められてから、手入れに余念がないストレートの黒髪は、今日はブローしてないのか艶が出ていない。
「もう、母さんは泣き過ぎでしょ!」
α同士の親からでさえ、稀に生まれてしまうΩ。
里子や離縁する事例が多い中で、変わらず俺を育ててくれた二人。
後ろから母さんに抱きしめられ。
サンドイッチのように両親に挟まれて。
あまりに暖かくて優しい二人のフェロモンに、俺もついに泣き出していた。
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