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○月×日『表札』★
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あれから一条さんと寝るようになった。
彼が僕の何を気に入ったのかは分からない。
けど、彼は僕を恋人みたいに優しく触れてくれた。
一緒にいると心地いい。
体が満足したら終わりじゃない、ベッドの上で他愛もない話もするし、会社の愚痴だって話したり、聞いたりする。
場所はいつもビジネスホテルだけど。
最初にシラフで抱き合ったのがスイートではないけど綺麗なホテルだった。
それに比べたら寂れてる。
けど、堂々とラブホテルなんか行けない。
お互いの部屋に行くような関係でもない。
セフレが欲しいわけじゃなかったのに、この関係て、間違いなくセフレだよね……。
恋がしたい。
一条さんと、というわけじゃない。
そんなのは、高望みだとおもう。
会社の先輩で、優しくて、かっこよくて。
でも、そういう人に惹かれてしまう。
先輩みたいな人に……。
ほんとは、先輩がいい。
先輩のものでいたかった。
新しい恋をしたら先輩を忘れられると思ったのに、そんな恋も見つからない。
昂平だって傷つけた。
僕は、欲しがる癖に人を傷つける。
わかってる。
分かってるなら、深入りしなければいいんだ。
昂平の時に学んだはずだ。
セフレはいらない。
けど、この位の関係が、僕にはいいのかもしれない。
それ以上の甘い関係は、僕も、相手も傷つく。
「山梨」
名前を呼ばれて、慌てて顔を上げた。
本日の一条寿志も周りの女性が必ず振り返るほどのいい男を発揮してる。
会社帰りに晩御飯、のちにビジホでセックスが今の僕らの関係だ。
ちょうどこの関係も1ヶ月くらいたった。
「またボーとしてる」
一条さんが呆れた顔をする。
「……すみません」
こんなやりとりは、最近増えた。
一条さんと会うと、必ず考えるからだ、自分の気持ちを殺してるって。
だからって、真剣に恋人をつくろうともしてない。
何かと言い訳を並べて、逃げてきた。
あの人と出会う前だって、女の子と付き合ったことだってあったし、大学時代に、いくらでもチャンスはあった。
でも作らなかった。
今は、一条さんだからだ。
あの人に似てるから…………だから、……だから、1番駄目なのに。
「もう食わないなら場所移すか?」
「ぇ」
僕の箸は完全に止まってる。
食欲が無いわけじゃない。
一条さんといるのに、上の空過ぎ……
一条さんは店員を呼んでお会計してる。
…………呆れられたかな。
……呆れて、捨てられたら、スッキリするのかな。
「ご馳走様でした」
「ん。」
店を出て、お礼を言う。
一条さんは僕に財布を出させない。
年上だし、自分も楽しんでるからって言ってた。
最初は申し訳なかったけど、しだいに慣れてきて……今は、また申し訳なく思ってる。
さっきのご飯だって、楽しい会話とか、なかった。
仕事終わりで疲れてるはずなのに、僕は気の利いた会話1つ出来ずに、一人でボーとしてた。
僕の悩みなんて、一条さんには関係ないんだし、彼と会う時くらいは割り切らなきゃいけないのに、全然誠意ってものが無かった……。
こんな気持ちで、次はセックス……。
……できるのかな、一条さん、呆れてたみたいだし、……怒ってないのかな。
黙って彼の後ろをついてくしかできない。
情けない、僕。
一条さんがエントランスに入って行くあとに続いて足を踏み入れた。
いつもと違った雰囲気だ。
何件か馴染みのビジネスホテルがあるけど、ここは初めてだ。
エントランスからロビー周辺を見渡して、いつものビジネスホテルより綺麗だなと感じる。
「え、あれ……?」
一条さんはロビーを素通りしてエレベーターに乗り込む。
受付とか、手続きはどうなってるの?
僕があたふたしてると、一条さんがエレベーターに乗ったまま手招きしてくるので、よく分からないままエレベーターに乗り込んだ。
「……、あの、宿泊中とかですか?」
多分ありえないけど、聞いてみる。
会社近くだし、出張てわけでもないのにビジネスホテルに宿泊中はないだろう……。
じゃあなんで受付を素通り……?
「ボーとしすぎだろ」
ため息混じりに、一条さんが僕を見下ろしてくる。
エレベーターを降りて、部屋の前で一条さんが鍵を取り出す。
ドアノブにさして……
その1連の流れと、部屋の表札を見て、やっと気づいた。
「……なに泣いてんの」
一条さんが困ったように笑う。
俯いて泣き出す僕の髪を撫でて、胸に抱き寄せてくれる。
「嫌だった?」
慰めるように背中を撫でてくれながら一条さんに尋ねられて、首を振った。
「ボーとしてて道順覚えてなさそうだから、次連れてくる時覚えるように」
「はい」
顔を上げて、頷くと、一条さんが嬉しそうに微笑んでくれた。
手を引かれて、部屋に入る。
すごくドキドキする。
こんな時て、現金だ。
頭の中が一条さん1色になってる。
「ん、」
寝室に直行して、キスした。
ベッドになだれ込んで、服を脱がし合って、すぐに一条さんを受け入れた。
滑りの悪いソコに、一条さんがローションを垂らして、細かく抜き差しして解してくる。
「んんぅ…っ」
抜けそうで抜けない、その位置が焦れったい。
痛くない、から、もっと奥まで……
「おっと、」
一条さんを寝かせて、上に乗ってやった。
ポジションが入れ替わって、一条さんが僕を見上げてくる。
「無理するなよ?」
「してないです。」
ゆっくりと一条さんのものを胎内に埋め込む。
ピッタリと裸が触れ合って中に全て収まった頃にはお腹がいっぱいに感じた。
「このへん?」
一条さんが面白がって僕の下腹部を指でつついてくる。
「……このへん」
余裕そうな顔に腹が立ったので、一条さんの手を掴んで、へその辺にその手を持って行って撫でさせる。
一条さんの表情が変わったのが見れた。
余裕顔が、獣っぽいそれに変わる。
腹の中で一条さんが膨れ上がるのを感じる。
「あっ、ぃ……っ」
一条さんが中で暴れる。
彼の胸に手をついて、必死にそれを受け止める。
「ぃく、も、僕…っ、ィっ」
堪らなく訴えると、腕を引かれて抱きしめられる。
「あァ、」
一条さんの腹に射精すると、僕の中で彼が脈打つのも同時だったと思う。
「山梨……」
僕の耳元で一条さんがまだ荒い息のまま囁く。
「ここで暮らさないか」
「………………えっ?」
僕は一条さんの上に乗ったまま、照れながら僕の様子を伺う一条さんを、真っ赤な顔で見下ろしてた。
一足飛びすぎじゃないだろうか。
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