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○月×日『元彼と③』
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駅までの道、昂平と並んで歩いた。
「相変わらずだね」
僕が懐かしく思いながら呟くと、昂平が「何が?」と僕を見る。
「みんな昂平のこと見てる」
店でもそうだったけど、道行く人……老若男女問わず昂平を目で追ってる。
振り返ってまで見てる女の子もいる。
「高校の頃もそうだったなと思ってさ。」
昂平と付き合ってる頃、2人で出かける時いつもこんな感じだった。
「俺がカッコイイからだろ」
冗談なのかよくわからないノリで返されて、自分で言うか?と苦笑してしまうけど、まぁ……事実カッコイイんだから仕方ないのかも。
金髪碧眼が目立つというのはあるけど、高身長でスタイルがいいのもあると思う。
付き合ってる頃、数回昂平の家に行ったことがある。
その時ご両親と会ったことがあるけど、ご両親は黒髪黒眼と日本人特有の色だったけど、造形美は整っていた。
持って産まれた色は違えど、昂平の外見の美しさは間違いなく遺伝だなと納得したのを覚えてる。
会ったことは無いけど昂平のお兄さんも瞳の色だけ昂平と同じブルーらしい。
宝石のように綺麗な瞳……、本人に言ったことはないけど、僕はすごく好きだ。
「いくら地でも会社勤めるのにどうかなって思ったけど、意外と会社でも好評なんだ。まぁ、英語喋れないって知った時の反応がやばかったけど」
まぁ、昂平は見た目だけでいえばアジアより北欧寄りで、日本語話してる方が違和感があるかもしれない。
この見た目で外国語話せないの?ていうのは偏見だろうけど、意外と思ってしまうのは仕方がないかもしれない。
「会社の女の子に言い寄られたりする?」
高校生の時も凄かったみたいだしな。
「これがあるし、パートナーが居ること知ってるから。」
昂平が左手をプラプラと振ってみせる。
「……会社の人知ってるってこと?……その、相手が男だって…」
「ああ。いちいちプライベート詮索されたくないからさ」
まぁ、昂平なら、合コンと言う名目の飲みの席のお呼ばれが絶えないだろう。
パートナーがいると宣言している人にそういった類の話を持ちかける輩はほぼいないだろう。
そういった意味ではいいのかもしれないけど、やりずらい部分もあるんじゃないだろうか……。
「女子社員は萌えてるみたいだけどな、中にはやっぱり偏見もってるやつもいるよ。でも俺からしたらそんなの時代錯誤だし、男とパートナーだからって俺が仕事できないわけじゃないし。」
「……そっか、」
やっぱり、カッコ良くなったよね……昂平。
見た目だけじゃない。
中身も。
「柚野ちゃん、幸せだろうな」
羨ましくさえ思えてしまう。
こんなに昂平がカッコよくなったのは、きっと柚野ちゃんの影響で、また昂平自身も柚野ちゃんのためにこんな風になったんだろうなって思う。
「まだまだこれからもっと幸せにする」
ニッ、と昂平が子供のような笑顔を見せる。
わざわざ来てもらって、情けない話を聞かせてしまったけど、昂平のこんな笑顔が見れたのは、本当によかった。
「次はゆずと来るよ。ほんとは今日も連れてこようかと思ったんだ。けどあいつが"僕がいたらできない大事な話かもしれない"て言って拒否ってさ」
恋人が元カレに会いにいくなんて、普通は心配になると思う。
もう終わってる相手だと割り切っても、いい気持ちはしないと思う。
……少なくとも僕ならそうだ。
柚野ちゃんは凄いな……、僕の心配までしてくれて……、きっとそれだけ2人の絆が強いってことだよね。
面倒くさがりな昂平が、僕と会うことの許可を柚野ちゃんにとったり……、昔の昂平はもっと自分勝手だった。
「うん、じゃあ……次会うまでに僕も……」
ちゃんとしないと……。
「蘭さん」
昂平が足を止めたので、僕もつられて足を止めた。
「自分のこと傷つけるのだけは、無しだぞ。……あんた、心の方はもうボロボロなんだから」
「………………、うん…」
ボロボロか……
昂平にはそう見えるんだ……?
「じゃ、またな」
「ん、……ありがとうね」
僕が小さく手を振ると、昂平は小さく微笑んで、改札の向かう側へ去って行った。
心はボロボロか……
そうなんだろうか……
真鍋先輩にレイプされたから?
木崎先輩に復讐されたり……
……叩かれたり……殴られたから?
…………優しくされたい。
抱きしめて欲しい。
ぽっかり空いてしまった穴を、埋めてほしい。
でも誰でもいいわけじゃない。
1度は昂平が埋めてくれた。
けど自分から手放した。
今は一条さんがいる。
……甘えていいんだろうか。
自分の都合のいい時だけ……
「蘭?」
背後から誰かに呼ばれた。
……誰に呼ばれたか直ぐに気づいた。
けど、振り返りたくなかった。
今、泣きそうな、情けない顔してる。
こんな顔、絶対に見られたくない相手だ。
「……気分悪いのか?」
駅前で1人で佇んでたから、そう見えたんだろうか。
背後から近づいてきて、顔を覗き込まれた。
「……先輩…」
気丈になんて振る舞えなかった。
僕はもう、この人の前では普通でいられない。
篤也…
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