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抑制
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――俺、キモいな…
ユキトは片付けを再開しながら遠い目をする。
好きな人の部屋を掃除してゴハン作ってくるとか女子か。でも、何かをしたくて堪らない。轟に言うと「尽くすタイプなんだねぇ」と笑われた。尽くすとか、ますますキモいんですけど。
「ん?」
その時、ユキトは整理していた紙類の中で毛色の違うものを発見した。
英字新聞や各国のニュース雑誌が多い中で、それは古典を題材にした本だった。しかもケースに入っており南倉の所有物にしては大事にされているようだ。本棚を買えば良いのに、と思いながら凝視する。
「どしたのユキトくん。考える人になってるよ」
「…地獄は見てません」
投げ掛けてくる南倉の問いにユキトは目を離さず応える。探偵は早々にサンドイッチを食べ終わりコーヒーを飲んでいた。愉快そうに笑む。
「いい切り返しだね。…ああ、その本?貸せないけど読んでいいよ。そういうの好き?」
「うーん…そうなの、かな?興味はあります」
お許しが出たのでユキトはケースから本を出してみる。思ったより重くて右手にズシッと来た。ハードカバーをゆっくり開いていく。百科事典みたいだった。
「ほとんど西洋だけどアジアと日本もあるよ」
「っ…!」
ユキトがパラパラとページをめくっていると、南倉の声が真横から聞こえてきた。髪と耳に息が掛かり、集中していたユキトの意識が本から引き戻される。
いつの間にか傍まで来ていた探偵を睨み、その勢いでパタンと本も閉じた。心の臓が保たない。
「掃除、します!!」
そう宣言して背を向ける中学生に、南倉は音を出さず苦笑した。
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