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デート
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「休憩しよっか」
南倉がそう提案したのは、ちょうどユキトも少し歩き疲れてきた頃だった。
二人で近くにある休憩スペースに入る。半端な時間だからか他に人は居らず、壁のガラス越しにクラゲがユラユラ揺れているだけだった。半透明なそれを腰を降ろしたユキトは眺める。
「はい」
「…へ?あ、ありがとうございます」
いつの間に買ってきたのだろう、南倉に渡されたジュースをユキトはワンテンポ遅れて受け取る。水族館って時間と場所を忘れるなあ、と水分を口にした。
例の如くこれも奢りだが、ユキトは入館前に言われた通り黙って飲む。南倉は多分しつこくされるとひねくれるタイプだ。
「…あのね、ユキトくん」
人心地ついて、コーヒーを手にする隣の南倉が切り出した。
ユキトは「はい?」と目を向ける。探偵は前を見据えたまま告げた。
「自分を責めるのは御門違いだよ」
何の事かは即座に悟った。常に考えていたから。
ユキトは、ツキンと脳に針を刺された気がした。でもそれはあくまでユキトだけの感覚で、南倉の声はどこまでも穏やかだった。
「自分が旅行に行かなければ、在宅していれば、彼女は被害に遭わなかった。そう思ってるだろ?…確かに、そうかもしれない」
ユキトは目を伏せる。全身が固まっていくのが分かった。
しかし、それを打ち消すように「でもね」と南倉は強い口調で続ける。
「だからって、ユキトくんが悪者になるのは変だ。不可抗力だよ。キミは、何も悪くない」
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