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罰
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帰り道とか、よく覚えていない。でも互いに無言だった気がする。
南倉を気遣うなら『冗談です』と笑い飛ばすべきだったかもしれない。でもそんな気力はなく、それにこの想いを嘘でも冗談にはしたくなかった。
「…それじゃ、また連絡するから。気を付けてね。ブザー持ってる?」
自宅近くで車から降りた少年に南倉は言う。とても優しい声で、でもそれが残酷だった。
ユキトは「はい」と無理に笑う。頬が完全に強張っていた。発進した車が角を曲がって見えなくなってから、ユキトは閑静な住宅街をフラッと歩き出す。
家人は誰も南倉の事を知らないので、自宅までは少し歩かなければならない。と言っても本当に近くだけれど。ユキトは空っぽの頭で足を前に運ぶ。何も考えられなかった。
これは、罰だ。罪を犯した、自分への。
「坊っちゃん!」
我に返ると自宅の門前だった。
そこに立っていた人影がユキトの元に走ってくる。少年の脱け殻のような体の前で、人影ーー時任は安堵した笑顔になった。それを見てユキトのぼんやりしていた意識は鮮明になる。へらっと執事に笑い返した。
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