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罰
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それだけは、それだけは嫌だ。
好かれていなくとも、嫌われたくはない。
だったら。
ユキトは深く呼吸をして、ゆっくりと携帯を操作する。人形になったみたいに動かし難い腕を上げ、機器を耳に当てた。呼び出し音が変に大きく響く。
『ユキトくん!』
なんと1コールで南倉は電話に出た。たまたま携帯を見ていたのかもしれない。
久々に聞いた声に、ユキトの心が締めつけられた。高すぎず低すぎず、耳障りのいい探偵の声。やっぱり好きだなあ、なんて少年は思った。思いながら、苦く顔が歪む。震える口を開いた。
「南倉さん…俺との契約、終わりにして下さい」
ユキトは自分の言葉に切り刻まれる。鼻がツンと痛み視界が揺れる。でも、声はしっかりと出す。
せめて明るく、お別れする為に。
電話の向こうは無言だ。ユキトは続ける。必死に、涙声にならないよう元気な声を腹の底から出す。
「お世話になりました!後は自分で何とかしますっ。合鍵は郵送でお返ししますので…あのDVDは、俺ん家に送って頂けますか?」
しまった。疑問形を使うなんて。自分で自分を俺は殺す気だ。
『……わかった』
ほら。
もう、この一言だけで、俺は死にそうだ。心臓に穴が開いて、脳がグラグラして、今にも倒れそう。
でも、挨拶しなきゃ。最後の。
「今まで、ありがとうございました。
……さよなら」
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