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発覚
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30分程が経過した。探偵と復讐者は一言も物言わず、二人でアパートを見ていた。
この男の言質を取っていないらしいが、「一人くらい先に殺しても構わないよ」と南倉はアッサリ宣った。ユキトは感覚が麻痺して何も思わなかった。余裕が無かった。
そして―――状況が動く。
「…出てきた」
探偵がユキトの背後で囁く。確かに一階に並ぶ、錆びかけたドアの一つが開いた。
そして中から現れたのは、写真と同じ顔。途端にユキトの心臓が暴れた。体温が一気に上昇する。
許しがたい罪を犯した男は、何も警戒せずアパートの敷地を出てユキトたちの潜む方向へ歩いて来る。ユキトはナイフを持つ手に力を込めた。
――稲田さん
ユキトの傍で笑っていた稲田とDVDの泣き叫ぶ稲田が脳裏で点滅する。
ユキトの視界が真っ赤になり、ばくばくと鼓動が耳を打つ。自分の怒りが途方も無い事を他人事のように知る。世界がユキトと憎い男だけになる。暑いのか寒いのか、もはや感覚が無い。
自然と恐れは消え、一歩、踏み出そうとした。急所を目指して。
でも、ユキトは気付くべきだった。男がドアに鍵を掛けなかった意味に。
ユキトは動けなくなった。踏み出そうとした足は力なく再び地に戻った。
男の出てきたドアが再び開き、赤ん坊を抱いた女性が、姿を現した。
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