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発覚
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――……え……?
ここで男が女性に対して酷い行動をしていたらユキトは続行しただろう。
しかし女性に気付いた男は嬉しげに振り返り後戻りする。そして女性の前に立つと相好を崩し、眠る赤ん坊の頬を優しく撫でた。「父ちゃん仕事行ってくるからな」なんて声を、復讐者は聞きたくなかった。
まるで、そんな。ユキトが望む、理想の父親みたいな言葉など。
ユキトは、打ちのめされた。
部屋に戻っていく女性に手を振り、目の前を通り過ぎて行く男に何も出来なかった。道端に控える電柱のように、微動だに出来なかった。
そっと後ろから自分のではない手が回ってくる。既に緩んでいた両手から、あっさりと凶器が回収された。そしてゆっくりと抱かれる。
「…堪えてくれてありがとう、ユキトくん」
南倉が静かに耳元で言うとユキトは振り返る。少年の目は既に大量の涙を零していた。ひきつったように肩で息をしている。
耐えてくれて本当に良かった。そう、探偵は思う。
可能性は限りなく零に近かったが、これでも恋人が強行するようなら無理にでも気絶させるつもりだった。南倉とてユキトに手荒な真似はしたくない。
「南倉さ、ぅく、…なん、で…」
しゃくりあげながら中学生は探偵に非難の目を向ける。気付いたのかもしれない。
「ひどい、です…わざと、でしょっ…?」
嗚咽する。やはり気付いたのだ。恋人の勘の良さに、こんな時なのに南倉は嬉しくなる。
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