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発覚
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男達の中で、妻帯者はあの男だけだった。依然復讐心が消えない依頼人に、最初に奴を見せたのは勿論故意だ。
だって、少年は幸せな家族に憧れているから。そして身を持って知っている。『親の罪は子供にとって被害にしかならない』という事を。『親の罪は、子供には無関係』だという事を。
「…ごめんね、キミをどうしても犯罪者にしたくなかった」
我ながら小狡かったと探偵は思う。
少年は皮肉にも考えられるのだ。あの男を殺してしまった後の事を。あの残された母子の事を。その優しさを、利用した。
どんなクズにも、愛し愛される者がいる場合がある。奇妙なそれは、人間の自分勝手で且つ唯一の称えられる所だ。
『情』。これが無ければ人類はとうの昔に滅びている。しかし残念ながら、それによって罪と罰は常にイコールにはならない。
「でもっ…ひどい、です…!稲田さんは、何も、悪いこと、してないっ…!」
その通り。だからと言って、被害者が泣き寝入りして良い訳もない。
南倉はユキトの向きを変え、自分の胸で恋人を泣かせる。あやすように黒い髪を撫でた。
「もちろん、それは俺も許せないよ。だから制裁は俺に任せてくれないかな。ユキトくんを恨んでいる奴を放置しておけないしね。吐かせるついでに、色々思い知らせてやるよ。生まれてきた事を後悔する位ね」
ユキトは瞠目して南倉を見上げた。幼さの残る顔が益々幼くなる。
探偵は、何だかんだで無垢で無知な少年に「言ったろ?吐かせる方法なんて幾らでもあるって」と口角を上げた。
ユキトは複雑な心境で、また大人の胸に顔を戻した。そして自分の情けなさにジワジワと新しい涙が浮かぶ。
復讐を心に誓った筈なのに。大切な人は、男が家族と幸福に過ごしている間にも苦しんでいる。
「っ…でも、俺、ころした、かった…、殺したかった…!!」
物騒な事を悲鳴のように叫ぶ少年に、「うん」と南倉はしっかりと応えた。
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