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昼下がり
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それなら元凶である父母に矛先を集中させよう。
そう思ったのは直ぐで、安易な思考だった。
しかし、それも阻まれた。
南倉と出会ってから、ユキトの狭かった視野が広がったように感じる。喜ぶべきかもしれないけれど、それ故に不味い事にも気付いた。
――たとえば失脚するなり殺害されるなりして父母が居なくなった場合、時任達はどうなるのか――
世間知らずな御曹司のユキトでも、今の世の中転職が難しいのは知っている。景気が多少良くなろうとも、業種によっては。
若い時任達も厳しいかもしれないのに、齢50に近い緒方は。朝霧グループに勤める社員達は。
何も知らなければ一切悩まなかっただろう。でも時に、無知ほど罪深いものは無い。
気付いて良かった。時任達を守れる。
だが、そう納得できるほど少年は達観しておらず。
――稲田さんに、どうして俺は何も出来ないんだ…
加害者の息子が会いに行ける筈も、手紙を書ける訳も――というか、どの面下げて何を書くのだ。
そんな自分が情けなく、憎い。
「どうしました?坊っちゃん」
視線に気付いた時任が柔らかく笑む。
ユキトは何故か泣きそうになって、慌てて目を閉じ寝たフリをした。
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