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逃亡
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職業柄、探偵には警察内にパイプがある。南倉も例外でなく、失踪中の狐目の男の手掛かりを伝を通じ発信していた。
そして今朝そこから連絡を受け、確認に行ったのだが。
その遺体の状況が、何よりも問題だった。
「…ユキトくんさ、肌身離さず持ってるものとか、ある?」
いきなりの脈絡のない探偵の問いに、ユキトは「へっ?」と間の抜けた声を上げる。
南倉は内心、焦っていた。とてつもなく嫌な予感がしていた。でも少年を必要以上に怯えさせないよう優美に微笑む。
「うん、ちょっと気になる事があるんだ。アクセとかストラップとかあるかな?」
「あ、いえ、どっちも付けてません…御守りくらいで」
ユキトは何も考えず正直に答えた。しかし南倉の胸中が嵐のようにざわめく。
「ごめん、それ見せてくれる?」と相変わらず穏やかに頼む探偵の変化に気付かない少年は、素直に胸ポケットから取り出した。
「開けるね」
受け取った南倉が断るとユキトは頷く。御守りの中に入っているのは、稲田の過保護な手書きの厚紙だけだ。見られても――思春期としては少々気恥ずかしいが――困るようなものではない。
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