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逃亡
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「水死体ってね、損壊するのが早いんだ。今の季節は特に」
南倉の発言にユキトは思わず息を詰める。本題に入った気がした。「水死体、見たことある?」という質問にユキトは首をブンブン横に振る。平和な日本の地で普通に生きていれば、そうそう遭遇するものではない。
南倉も分かっていて訊いたらしく、「気分が悪くなると思うから想像しないでね」と前置きした。
「水死体は…ま、普通の死体もいずれそうなるんだけど、腐ってくんだよね。顔から。んで、腐敗ガスで全身が膨れてくるんだ。巨人様化って言うんだけど」
ユキトは想像しかけた自分を咄嗟に押し留める。南倉は宥めるつもりなのか、ポンと少年の頭に手を載せ、ゆっくり撫でつつ続けた。
「水温が高いほど腐敗は早まる。今は9月下旬だけど最近は真夏日だったからね。3日くらいで巨人様化は始まるんじゃないかな」
「でもね」と南倉は声のトーンを落とした。
「狐目の男の遺体は、全く腐敗が無かった。綺麗すぎたんだ」
「そして」
探偵の手が、止まる。
「手足には、明らかに拘束されていた跡があった」
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